研究実績の概要 |
本課題は、虚偽検出場面における真偽判断への確信度と正確さとの関連を検討することを目的とする研究である。本年度は、前年度に取得した、16の動画に対する確信度と正答率に関するデータの解析を実施した。 ベイズ統計モデリングの手法を用いて、①確信度と正答率に関連がない切片のみの回帰モデル、②確信度に比例して正答率が上昇するロジスティック回帰モデル、③確信度に比例して正答率が上昇するが、分割点において偏回帰係数が変化する折れ線ロジスティック回帰モデルの3つのモデルの比較を行った。また、先行研究では嘘を見抜く側による分散は小さく、嘘をつく側の分散は大きいことが指摘されている(Bond and Depaulo, 2008)ため、16のビデオによる違いをランダム効果としてモデルに組み込んだ。 分析の結果、②では偏回帰係数の95%HDIが0を含んでいなかったものの限りなく0に近い値となっていた。③では、分割点よりも低い確信度では②とほぼ同じ偏回帰係数が得られていたが、分割点を超えると急に分散が大きくなり95%HDIが0を含むようになった。対数尤度とWAICによるモデル比較では、①のモデルが最も当てはまりがよかった。 以上の結果から、確信度と真偽判断の正確さは関連がないという結論が得られ、先行研究である Smith and Leach(2019) の結果とは矛盾していた。未公刊研究であるLukeらの研究でもSmith and Leach(2019)の結果は否定されていたことから、確信度は真偽判断の正確さには影響しないようである。つまり、真偽判断はアトランダムな認知プロセスに基づいている可能性が高く、少なくともこの観点からは正答率54%の理由は説明できないことが示唆された。
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