研究課題/領域番号 |
20K22269
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 拓海 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 特任研究員 (30879820)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | 記憶 / 行為主体感 |
研究実績の概要 |
内容:ヒトが適切な行動パターンを学習するには、自分が過去に取った行動とその結果生じたイベントを記憶する必要があると考えられる。しかし、行動に関連するエピソード記憶が他の外的イベントの記憶とどのように区別され、適切な学習が可能となっているかについては明らかでない。これまで本研究では、行動の実行時に提示されていた刺激が何もせず見ていただけの刺激よりも思い出されやすいことが明らかにされた。当該年度ににおいてはさらに、実際に行動を行ったときだけでなく、行動の準備段階においても同様に記憶の促進が生じうることを示した。 重要性:これまでの研究において記憶項目は単に「刺激」として扱われてきたため、それが行動の対象や、結果として意味を持つことが記憶に与える影響は調べられていない。行動の記憶はこのような,自分が何を行なったことで、対象にどのような変化が起こったかという順序性を持つ文脈情報を含んで初めて機能すると考えられる。したがって本研究は、記憶と行動の関係を整理し、括的に理解するために、その基礎的なメカニズムを明らかにしようとする試みとして位置づけられる。ここで得られた知見は、単に行動することだけでなく、それを通じて環境とインタラクションすることを重視するアクティブ・ラーニングの発展に寄与すると期待される。特に、本年度得られた行動の準備による記憶の促進効果は、これまで考えられてきた運動と記憶の理論的関係を拡張しうるものである。成果として、これまで得られた知見をまとめた論文が現在国際学術誌において査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨今のコロナ情勢により、研究計画をオンライン実験を中心として再編成する必要が生じたため一部に遅れが生じた。ただし、これまでの研究おいては一定の結果が得られ、学会発表を予定しているほか現在国際学術誌に投稿中であるなど、最終的には期待した成果が得られることが見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
計画の遅れは期間延長により十分補完可能な範囲であるため、基本的には計画に沿った運用を行う。社会情勢の変化を鑑みて、対面実験だけでなくオンライン実験も利用するなど、臨機応変な対応を取る。学会発表および学術論文の掲載を通して得られた研究成果を適切に形にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響により見送られた実験実施や学会参加にかかる費用が浮いたため、次年度使用金が生じた。次年度の実験実施及び成果発表に使用予定である。
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