研究課題/領域番号 |
20K22274
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
井関 紗代 中京大学, 経営学部, 助教(テニュア) (60879922)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | 心理的所有感 / 心理的所有感尺度 / 信頼性 / 妥当性 / コントロール感 |
研究実績の概要 |
新商品は消費者に非常に受け入れられにくく,しばしばマーケティングにおいて失敗を招く。特に,類似した商品がなく,技術革新などによって生まれたまったくの新商品(really new product; RNP)は過少評価され,受け入れられにくい。その要因として,RNPについてのエピソード記憶や意味記憶を十分に有していないことから不確実性が知覚され,コントロール感が得られにくいためであることが想定される。本研究では,RNPに対する心理的所有感(psychological ownership)の生起に着目し,RNPの使用を心的にシミュレーションすることで心理的所有感が高まり,その結果,新商品が受容されることを想定し,そのプロセスを解明することを目的とする。 まず本研究の遂行において,心理的所有感を正確に捉える尺度が必要であると考え,「日本語版心理的所有感尺度」を作成し,信頼性および妥当性の検討を行った。当該年度は,4つの調査からなる研究結果を論文にまとめ,学術誌PeerJに掲載された。また,その内容は,第64回消費者行動研究コンファレンスでも発表予定である(2022年5月)。加えて,新商品はコントロール感が得られにくい状況(low control)を生むことを想定し,代償的コントロール理論(Compensatory Control Theory)に着目した。人は生得的にコントロール欲求を有しているため,コントロール感が得られない場合には,そのコントロール感をベースラインまで回復させようとする傾向がある(Kay et al., 2008)。そこで,コントロール感を促進し,心理的所有感を高める操作として,カスタマイズの効果を検討した。予備実験と本実験からなる研究結果を論文にまとめ,現在,投稿準備中である。また,研究内容の一部は,第63回消費者行動研究コンファレンスで報告された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,新商品の受容に心理的所有感の生起が媒介することを想定しており,そのプロセスを解明することを目的としている。本研究課題を遂行する上で必要不可欠だと考えていた日本語版心理的所有感尺度が論文として掲載された。そのため,心理的所有感を2つの側面(所有物・自己関連性因子,所有感覚因子)から,正確に捉えることが可能となった。また,新商品が受け入れられにくい要因として,コントロール感の低減が想定されるため,そういった状況で心理的所有感を高める操作としてカスタマイズの効果を検討した。これらのことから,現在までおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,新商品の使用を心的にシミュレーションすることで心理的所有感が高まり,その結果,新商品が受容されることを想定し,そのプロセスを解明する。また,新商品を提供するブランドに対するコントロールの知覚が及ぼす影響も検討することで,包括的な説明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で,国際学会の現地参加を見送ったことや対面実験が難しいことで実験参加者への謝金が必要ではなかったため,次年度使用額が生じた。論文掲載料およびオンライン実験の実施にかかる費用として使用する予定である。
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