研究実績の概要 |
新商品は消費者に受け入れられにくく,しばしばマーケティングにおいて失敗を招く。特に,類似した商品がなく,技術革新などによって生まれたまったくの新商品(really new product; RNP)は過少評価され,受け入れられにくい。その要因として,RNPについてのエピソード記憶や意味記憶を十分に有していないことから不確実性が知覚され,コントロール感が得られにくいためであると考えられる。本研究では,RNPに対する心理的所有感(psychological ownership)が高まることで,新商品が受容されることを想定し,そのプロセスを解明することを目的とした。 まず本研究の遂行において,新商品はコントロール感が得られにくい状況(low control)を生むことを想定し,補償的コントロール理論(Compensatory Control Theory)に着目した。人は生得的にコントロール欲求を有しているため,コントロール感が得られない場合には,そのコントロール感をベースラインまで回復させようとする傾向がある(Kay et al., 2008)。そこで,コントロール感を促進し,心理的所有感を高める操作として,カスタマイズの効果を検討した。予備実験と本実験からなる研究結果を論文にまとめ,現在,査読中である。加えて,急速に普及している音楽ストリーミングへの心理的所有感に着目し,コントロール欲求の影響を検証した研究を論文にまとめ,『マーケティング・ジャーナル』に採録決定済みである。 さらには,新サービス(really new service; RNS)の評価に対する処理の流暢性の影響を検討し,その研究結果を日本マーケティング学会カンファレンス2023で発表する予定である。
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