研究課題/領域番号 |
20K22277
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
伊藤 友一 関西学院大学, 文学部, 助教 (00879710)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | 記憶 / 好奇心 / 退屈 |
研究実績の概要 |
好奇心が喚起されている時,記憶成績が向上することはよく知られている。しかしながら,好奇心が喚起されるとき,如何にして記憶亢進が生じているのかという背景の理解は不十分である。本研究では,好奇心と対照的な状態である退屈に着目し,退屈状態から好奇心状態への遷移を利用して,好奇心によって記憶亢進が生じる背景プロセスの解明を目指している。そのため,退屈状態から脱しようとするときの状態が,好奇心喚起状態に近い状態と言えるのかどうかを検討する必要があった。そこで,実験参加者に退屈な課題を遂行させ,その状態に耐え難い場合はボタン押下によって異なる刺激(ネガティブ刺激を含むと事前に教示)が出現するという課題を行った後に記憶課題を実施することで,好奇心喚起状態と同様に記憶亢進が生じるかどうかを検討する予備実験を試みた。その結果として,退屈状態・及び退屈回避行動は見られたものの,記憶亢進を検出するには至らなかった。退屈回避の動機づけが弱かった可能性も考えられるため,手続きの修正が必要である。 また,好奇心による記憶亢進の背景としてドーパミン神経の活動が報告されている。ただし,睡眠時にはドーパミン神経の活動を抑制することで記憶の干渉が防がれていることがハエの研究から示されている。したがって,好奇心喚起によってドーパミン神経活動が高まるとき,干渉が大きくなる可能性が考えられた。そこで,好奇心が強く喚起されたとき(高好奇心条件)と弱く弱くされたとき(低好奇心条件)の記憶干渉について検討する予備実験も実施した。その結果,記憶の干渉は確認されなかったが,そもそも好奇心喚起による記憶亢進自体も確認できなかった。そのため,現在は適切な好奇心状態操作を行うための刺激作成を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
先行研究の再現,好奇心や退屈状態を操作するための刺激や手続きの確立に思いのほか時間がかかっており,本実験へと進めないでいる。また,感染症蔓延の影響もあり,実験参加者を集めることもスムーズではなかった。学術大会準備や学務教務の負担などの影響もあり,思うように研究に時間を割くことができなかった。上記のように複数の理由により,予定よりも進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,好奇心による記憶亢進現象を再現できる刺激,より強い退屈回避欲求を喚起するための手続きの確立を急務とする。また,再現失敗によって新たな仮説も生まれたため,その仮説を検証するような研究も進める。最終的に得られた結果を取りまとめ,学会,研究会などで発表を行い,論文として投稿することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症蔓延,学術大会準備,学務教務の負担などの理由によって研究が進まず,次年度使用額が生じた。2022年度は計画の遂行にあたって機材やPC関連の消耗品,人件費,学会出張など多くの資金が必要になると見込まれる。今回生じた次年度使用額はそれらに当てる。
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