本研究は,休憩の効果を最大限に得る過ごし方を提案するために,脳が休憩状態の時に生じるマインドワンダリング(外界の環境とは関係のないぼんやりとした思考に着目して,①休憩中に思考内容の拡散程度が高いマインドワンダリングが生じることの機能的利点,②拡散程度の高いマインドワンダリングの神経科学的特徴,③拡散程度の高いマインドワンダリングが生じている休憩中の行動について明らかにすることが目的であった。 研究①~③は全て対面での実施を計画していたが,コロナ2019の感染拡大防止策のため,全ての研究をweb上で行うよう変更した。具体的には,初年度に内容を一部変更した研究①をweb上で実施し,次年度に内容を一部変更した研究③をweb上で実施した。なお,研究②は身体的的接触が不可欠であったため実行を断念した。そして,最終年度に,研究①と研究③の知見の分析を行い,論文化のための執筆を行った。 研究①の調査によって,マインドワンダリング中の思考の拡散程度が高いほど,創造性が高いことが明らかになった。また,マインドワンダリングの拡散程度の高さは,反すう傾向や非意図的なマインドワンダリングとは有意な関連を示さない一方で,省察傾向や意図的なマインドワンダリング傾向と正の関連を示した。これにより,拡散程度が高いマインドワンダリングの方が創造性や省察といったより適応的な変数との関連が強いことが示された。 研究③の調査によって,創造的な問題解決に行き詰まった後のあたため期(休憩中)に,より拡散程度が高いマインドワンダリングをすることで,再度取り組んだ創造的な問題解決が増進されることが明らかになった。 研究①と研究③の知見は,それぞれ国際学会および国内学会で発表予定である。また,引き続き論文化のために執筆と原稿の修正を行っている。
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