研究課題/領域番号 |
20K22288
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
中村 杏奈 東京女子大学, 人間科学研究科, 研究員 (90878513)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 抑うつ / 自己主体感 / 感情的反応性 / 顔筋電反応 |
研究実績の概要 |
コロナ禍で対人交流が制限される今,社会的孤立によるうつ病リスクが高まっている。これまでの抑うつ研究では,対人交流一般は,抑うつの維持・悪化要因として理解されてきた。一方で,対人交流の中でも他者の顔に注目すると,抑うつ状態においては,他者の顔に触れることでネガティブ情動が低減する報告もある。本申請は,抑うつ者の他者刺激に対する感情的反応性 (観察者の感情の動きやすさ) に着目し,その効果を細分化することで,抑うつ状態における対人交流の中でリスク予防に繋がる要素の解明を目指す。これまでの研究実績として,以下の二点に関して検討を行ってきた。
①異なる感情価を示す顔と声に対する感情的反応性 感情的反応性として,当初は自記式質問紙での主観的な回答のみを予定していたが,大学の対応指針の変化により対面での実験が一部できるようになったため,顔筋電・心拍を含む生理計測も行うこととした。 ②自分の行動に随伴する他者刺激に対する感情的反応性 他者の顔や声が自分の行動に随伴する状況として,自己主体感(自分の行動が外部の結果を引き起こしたという感覚)のパラダイムを用いて検討を行っている。主要なパラダイムであるIntentional Binding課題を採用し,まず課題のオンライン化を行い,認知心理学会での発表を行った。次に,全般的な自己主体感と抑うつ状態の関連を検討した結果,健常者において,抑うつ症状が強い人は全般的な自己主体感が低いこと,すなわち,感覚運動レベルで「自分がこの現象を引き起こした」という感覚が低いことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二つの研究を予定しており,それぞれを並列して進めている。
①異なる感情価を示す顔と声に対する感情的反応性 これまでに倫理申請を完了し,測定の練習・実験環境の構築を行っている段階である。まずは喜び・怒り・悲しみの3種類の感情を使用し,顔のみ・声のみを提示した際の生理的な反応を検討する予定である。 ②自分の行動に随伴する他者刺激に対する感情的反応性 現在,他者の顔が自分の行動に随伴する場合の自己主体感について検討しており,予備実験を終えてデータ収集を進めている段階である。
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今後の研究の推進方策 |
①では,まず顔のみ・声のみの感情を提示した際の生理的な反応を検討する予定である。 ②では,行動に随伴する他者刺激の検討については検討できる環境ができている。その後,①と②についてのこれまでの進捗を統合し,自分の行動に随伴する他者の顔や声への自己主体感と,感情的反応性との関わりについて検討を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大が続いており,国内学会・国際学会が引き続きオンライン開催になっており,旅費が全く使用できていない状況である。また,昨年度はオンラインでの実験も多かったため,実験参加者への謝礼が「その他」として換算されたため,「人件費・謝金」を使用できなかった。2021年度は対面実験のために必要なパソコン機材・ソフトウェア一式,実験者や実験参加者への謝金,対面開催を予定している学会の旅費として使用する予定である。
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