研究課題
コロナ禍で対人交流が制限される今,社会的孤立によるうつ病リスクが高まっている。これまでの抑うつ研究では,対人交流一般は,抑うつの維持・悪化要因として理解されてきた。一方で,対人交流の中でも他者の顔に注目すると,抑うつ状態においては,他者の顔に触れることでネガティブ情動が低減する報告もある。本申請は,抑うつ者の他者刺激に対する感情的反応性 (観察者の感情の動きやすさ) に着目し,その効果を細分化することで,抑うつ状態における対人交流の中でリスク予防に繋がる要素の解明を目指してきた。①異なる感情価を示す顔と声に対する感情的反応性:感情的反応性として,当初は自記式質問紙での主観的な回答のみを予定していたが,大学の対応指針の変化により対面での実験が一部実現したため,顔筋電・心拍を含む生理計測を行った。抑うつ傾向は他者の表情や音声に影響を与えない一方で,感情の評定は「怒り」だと回答しやすいように,認知におけるネガティブバイアスが見られた。生理計測に関しては電気通信情報学会での発表がヒューマンコミュニケーション賞を受賞した。②自分の行動に随伴する他者刺激に対する感情的反応性:他者の顔や声が自分の行動に随伴する状況として,自己主体感(自分の行動が外部の結果を引き起こしたという感覚)のパラダイムを用いて検討を行っている。自分の行動に続いてポジティブな顔が呈示されると,自分の行動の結果だと感じやすいself-serving biasが見られた。その中でも,抑うつ状態が強いひとはself-serving biasが弱い可能性が見いだされた。
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Journal of Affective Disorders Reports
巻: 7 ページ: -
10.1016/j.jadr.2021.100295
信学技報
巻: 121 ページ: 11-16