研究実績の概要 |
本研究は、うつ・不安に対するマインドフルネス療法の効果の程度を、安静時の脳機能から予測することを目指したものである。新型コロナウイルスの感染拡大により、マインドフルネス集団療法を実施することができず、効果を予測するのに十分なサンプルサイズを集めることができなかった。そこで、マインドフルネス療法が、目の前の体験から注意が逸れて、無関係なことを考えるマインドワンダリングに影響を与えることで、うつや不安を改善していると考えられることから、マインドワンダリング傾向と関連する安静時の脳状態を検討することにした(うつや不安が高い人ほど大きな改善が見られるのと同様に、マインドワンダリングしやすい人ほど、マインドフルネスが効きやすいと考えた)。学生29名を対象に、安静時の脳波測定と、意図的・非意図的マインドワンダリング傾向を測る自己評定尺度を実施し、その間の関係を検討したところ、非意図的なマインドワンダリングをしやすい人ほど、左右の後部帯状回と右内側前頭前野の間のα2波(10-12Hz)の機能的結合が強いことが示された(Yan, Takahashi, et al., 2022, NEURO2022)。このようなデフォルトモードネットワークの機能的結合は、瞑想実践者と非実践者で異なることが先行研究で示されており、さらに非意図的マインドワンダリングは高いうつ傾向と関わることがわかっていることから、安静時の脳機能がマインドフルネスのメカニズムに関わっている可能性がある。今後、実際にデフォルトモードネットワークなどの脳機能がマインドフルネスの効果を予測することができるのかを検証していく必要がある。
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