研究実績の概要 |
本年度得られた主な結果は以下の二つである. ① 二相Serrin 型優決定問題の摂動解の構成を行った. 具体的には, 同心球(自明解) に適切な摂動を加えることで, 非自明解を構成した. 特に, 先行研究では未解決問題だった, 介在物がLipschitz領域の場合における非自明解の存在を示した. さらに, 介在物の「固定境界」と母体の「自由境界」の正則性が異なる摂動解の構成に成功したという点でも, 既存の結果[Cavallina-Yachimura 2020] の改良が得られたといえる. ② G. Poggesi 氏(西オーストラリア大学)と谷地村敏明氏(京都大学) との共同研究により, 二相Serrin型優決定問題の解における定量的な評価が得られた. 具体的には, Serrin 型優決定問題において, 一相と二相の場合における解の形状を定量的に比較した. 一相の場合は, 本優決定問題の解は球に限る[Serrin 1971]. 一方で, 二相の場合は非自明な解もまた存在することが知られている[Cavallina-Yachimura 2020].二相Serrin 型優決定問題の問題設定が「一相に近い」という仮定の下で, 二相Serrin 型優決定問題の解は「球に近い」という定量的な評価を与えた.
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今後の研究の推進方策 |
介在物と母体からなる複合媒質における楕円型優決定問題(二相Serrin型優決定問題)の非対称解(非自明解)とこれらを成す族における, より精密な解析を行うことを今後の研究の目的とする. 特に, 非自明解の大域的解析に重点を置いて研究を進める予定である. 具体的には, 以下の課題に挑戦する予定である. ① 任意に与えられた一般の開集合(連結とは限らない)を介在物とした解の構成に努める. ② 介在物を固定した上で, 解(自由境界)の族が成す(葉層)構造を考察する. ③ 界面エネルギー(Kapitza抵抗)を伴う複合媒質におけるSerrin型優決定問題に既存の結果を拡張する.
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