研究課題/領域番号 |
20K22303
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
福田 一貴 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (60882214)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | Burgers型方程式 / 分散-散逸型方程式 / KP-Burgers方程式 / ZK-Burgers方程式 / BBM-Burgers方程式 / 解の漸近挙動 / 空間異方性 |
研究実績の概要 |
本年度は前年度に引き続き, 幾つかの分散項付きBurgers型方程式の初期値問題を取り扱い, それらの解の漸近挙動の解析を行った. 研究実績は以下の通りである: (1) KP-Burgers方程式とZakharov-Kuznetsov-Burgers方程式に関連する研究 本年度は空間二次元におけるKP-Burgers方程式とZakharov-Kuznetsov-Burgersの初期値問題を取り扱った. これらの方程式は, 分散項の形状がx方向とy方向で異なり, さらに散逸項がx方向のみに働くという形をしているのが特徴である. 本研究では, まず両者の線形化問題の解析を行い, 方程式がx方向には放物型となることと, x変数に関して方程式をフーリエ変換するとy方向にはシュレディンガー方程式とみなせることに着目し, 線形解の時間減衰評価を導出した. また, x方向に関して放物型方程式のアイディアを適用することで, 線形解の漸近公式を導出した. さらに, KP-Burgers方程式に関しては非線形問題に関する考察も行い, 線形解の漸近公式を応用することで, 解の非線形パートを減衰の遅い主要な部分とより減衰の速い項に分解することに成功した. 現在は解の主要部をさらに展開して解析し, 非線形問題の解の下からの評価や漸近形の導出にも取り組んでいる(平山浩之氏との共同研究). (2) BBM-Burgers方程式の解の漸近挙動に関する研究 空間一次元の問題ではあるが, 分散項付きBurgers方程式の研究の一環として, BBM-Burgers方程式の解の漸近挙動の解析に取り組んだ. 本研究では初期値が空間遠方で減衰する場合の問題を扱い, KdV-Burgers方程式に対して用いられた漸近解析の手法を応用することで, 解の漸近形を第二次漸近形まで導出することに成功した(池田正弘氏との共同研究).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は当初の計画通り, 高次元において空間異方性を持つBurgers型方程式に関する研究に順調に取り組み, 解の漸近挙動に関する新しい進展があったと言える. 特に, KP-Burgers方程式とZakharov-Kuznetsov-Burgers方程式については, これまでの先行研究では線形解の評価を得るためだけでさえ, 初期値に非常に強い人工的な条件を仮定する必要があったが, 本年度の研究ではそうした条件を仮定せずに, 線形解の漸近公式を導出することに成功した. 一方で, 非線形問題に関しては, KP-Burgers方程式については進展があったものの, 論文完成まであと一歩のところで期間を終えてしまい, 本報告書の提出までには論文を投稿するに至らなかった. また, Zakharov-Kuznetsov-Burgers方程式については未だ多くの課題が残っており, 予定通りに研究が進んでいるとは言えない状況である. 一方で, 空間一次元の問題ではあるが, 関連する研究として行ったBBM-Burgers方程式の解の漸近挙動の解析については, 論文執筆および投稿作業を完了し, 現在査読中である. このため, 研究全体としてはは進展があると言えるが, 当初に計画していた研究としては遅れ気味であるため, 上記の評価が適切であると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では, まず積み残しとなっているKP-Burgers方程式の解の漸近挙動の解析を最優先に行い, 解の下からの評価と漸近形の導出を完成させる. その後はZakharov-Kuznetsov-Burgers方程式の解の漸近挙動の解析を行う. こちらはKP-Burgers方程式と同様に, 本年度の研究で線形解に対する漸近公式の導出ができてはいるものの, 方程式の構造がKP-Burgers方程式よりも複雑で, 非線形問題の解析はまだこれからと言った状況である. 今後の研究の具体的な推進方策としては, まず初期値に関する仮定の見直しを検討する. これまでの計画では, 方程式の空間異方性に着目し, 初期値に適切な方向別の重みをつけてエネルギー法を適用するつもりであったが, どのような条件を仮定すればよいのかが不透明な状況であった. しかし, 今年度の研究では, そうした空間異方的な仮定を設けずに線形解の漸近公式を得ることが出来ているため, 非線形項を別の方法で評価することも検討するつもりである. 例えば, Fourier Splitting Methodなど用いて, 解の構造を周波数ごとに詳しく調べ, 散逸と分散の効果をそれぞれ詳細に調べることなどを考えている. なお, 本研究は今後も平山浩之氏との共同研究の体制で実施していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては, 本年度も引き続き新型コロナウイルス感染症の影響を受け, 研究打ち合わせのための他機関への訪問や, 研究集会に参加して情報収集するなどの, 研究遂行のための出張が思うように出来なかったなったことなどが挙げられる. また, 当初の計画よりも研究が遅れていることもあり, 研究成果発表による出張の機会も例年より少なかったことも原因の一つである. 次年度の使用計画としては, 感染症の拡大状況を考慮しながら, 可能な範囲で研究出張のための使用を引き続き検討しつつ, 場合によっては研究に必要な専門書籍の購入や, 研究環境整備のための消耗品の購入での使用を考えている.
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