研究成果の概要 |
本研究ではTeichmuller理論およびその高階化に関する幾何学をクラスター代数を用いて組み合わせ論的な観点から明らかにすることを目標とした. 具体的目標の (A) 高階ラミネーションの幾何学的な構成, に関しては階数2のLie代数であるsl(3), sp(4)の場合に概ね達成でき, 半単純Lie代数への一般化を見据えた多くの観察を得た. (B) 擬Anosov写像類の高次Teichmuller空間上の作用に関する力学系的特徴量の決定, に関してはその理論的準備段階としてクラスター多様体への符号安定な変異ループの代数的エントロピーを研究し, 非輪状箙の場合に完全に決定することができた.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究成果の大きな学術的意義は曲面のトポロジー, 表現論, 量子トポロジーといった分野にわたる知見をクラスター代数という組み合わせ論的枠組みの中で結びつけ, 高階Teichmuller空間という数学/物理の両面から興味深い対象の無限遠での挙動について幾何学的な理解を提供したことにある. すなわち, 曲面上のある種の幾何構造の「退化」先の幾何学的記述である. またこの成果は, クラスター多様体の双対性の理解に向けた幾何学的基礎をなす. リーマン面のモジュライ空間の位相的構造を司る写像類群のさらなる構造解明に向けた理論的枠組みを整理したことも本研究の意義といえる.
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