研究課題/領域番号 |
20K22312
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
村尾 智 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 助教 (10880304)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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キーワード | 結び目 / ハンドル体結び目 / 空間曲面 / カンドル / ラック / 多重群ラック / (多重群)ラックコサイクル不変量 |
研究実績の概要 |
当年度の研究成果は,多重群ラックコサイクル不変量を用いて,彩色不変量では分類不可能な有向空間曲面の分類例を与えたことである. 有向空間曲面とは3次元球面に埋め込まれたコンパクトな向き付けられた曲面のことであり,結び目やハンドル体結び目の一般化と見なすことができる幾何的対象である.多重群ラックとは,有向空間曲面のReidemeister変形に由来する代数であり,群の直和構造を持ったラックである.多重群ラックを用いることで有向空間曲面の彩色不変量が構成でき,これまでの研究において,多重群ラックの構成法の確立や,彩色不変量による有向空間曲面の分類が行われた.さらに,近年の研究によって,多重群ラックの(コ)ホモロジー理論が構築され,有向空間曲面の多重群ラックコサイクル不変量が構成された.また,既知のラックコサイクルから新たなラックコサイクル,及び多重群ラックコサイクルを構成する手法も確立された. 当年度における研究では,実際に様々な多重群ラックのコサイクルを用いて,有向空間曲面のコサイクル不変量の計算を行った.特に,有向空間曲面の補空間の基本群表現を適切に制限することでコサイクル不変量の精密化と計算の簡約化を行い,彩色不変量では分類不可能な有向空間曲面の分類に成功した.また,これらの研究成果及びその関連研究について,国内外の研究集会やセミナーにて講演を行い,専門家と議論を交わし,専門知識を学ぶと共に情報の共有を行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有向空間曲面の多重群ラックコサイクル不変量を計算し,多重群ラック彩色不変量では理論的に分類不可能な有向空間曲面の分類に成功した.また,有向空間曲面補空間の基本群構造を用いることでコサイクル不変量の精密化及び計算の簡約化に成功した.以上より,本年度は概ね順調な研究成果を挙げたと評価した.
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今後の研究の推進方策 |
有向空間曲面の様々な対称性(可逆性やカイラリティなど)に関する問題について,多重群ラックコサイクル不変量の観点から研究を進める.また,空間曲面の基本的な幾何的不変量について考察を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により,当初予定していた研究集会や研究打ち合わせによる出張費などの支出が生じなかった.繰越分の予算は主に翌年度の出張費及び物品費に使用する予定である.
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