研究課題/領域番号 |
20K22319
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
谷口 正樹 国立研究開発法人理化学研究所, 数理創造プログラム, 基礎科学特別研究員 (30880520)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 2次元結び目 / Yang-Millsゲージ理論 / Chern-Simons汎関数 / 特異インスタントン / インスタントンFloerホモロジー / 結び目Floerホモロジー / Khovanovホモロジー |
研究実績の概要 |
本研究の主題は, Yang-Millsゲージ理論を用いて"滑らかな2次元結び目と位相的な2次元結び目の差異"を明らかにすることであった. Yang-Millsゲージ理論を用いる際に, 次の二つの可能性が考えられる: ・与えられた2次元結び目に対して手術を行い, 得られた閉4次元多様体, 及びその無限被覆空間上で, Yang-Millsゲージ理論を展開する ・与えられた2次元結び目に沿った特異接続のYang-Millsゲージ理論を展開する 前者の可能性について, instantonモジュライ空間の構造を列挙し, 滑らかな2次元結び目のSeifert超曲面と, 結び目群の既約SU(2)表現の存在を結びける, という研究を行う. また, その際, 必要になるSU(2)表現空間の計算に関して, 計算アルゴリズムの解析を試みる. 後者は, Kronheimer-Mrowkaにより構築された特異接続のYang-Millsゲージ理論を用いて得られるsingular knot Floerホモロジー理論を使う, というものである. また両者理論の関係を明らかにすることも試みる. 後者では, 2次元結び目のスライスとして得られるスライス結び目と, (2次元結び目の)結び目群の表現と関わることが予想される. 既に, Daemi-Scadutoによって, signatureが0でない結び目同士を間のconcordanceの補空間には, (tracelessな)既約SU(2)表現が存在することが示されている. この結果をより精密にすることも考察する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は, ・与えられた2次元結び目に沿った特異接続のYang-Millsゲージ理論を展開する という課題について基礎的な知識を身につけた. 特に, reducibleのないあるクラスのSO(3)-bundleの場合で, 2次元結び目のmeridian方向のholonomyのorderが漸近的に2になる状況を考えると, 誘導されるsingular knot Floer homologyの準同型が, 2次元結び目の結び目型に依存しない, という事実について学んだ. これは, 2次元結び目に沿ったdouble branched cover上でinvoltuion不変なinstantonモジュライ空間を考えることに相当する. Kronheimer-Mrowkaは, この事実をある特定のクラスのリンクに拡張することで, E_2-termがKhovanov homologyであり, 収束先がsingular knot Floer homologyになるようなスペクトル系列を構成した. 3月の終わりに, Kronheimer-Mrowkaのこの業績に関する勉強会を開催し, 10日間に及び, singular instanton理論についての理解を深めた.
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況に書いた, 上記の2次元結び目の結び目型に依存しない, という事実は, 可約接続がある場合には, 起こり得ない現象である. 今後は, 可約接続がある場合の, instantonモジュライ空間から得られる情報について考察する予定である. 最近, Daemi-Scadutoが, 可約接続がある場合の特異instantonモジュライ空間についての解析を行なった. その考察から得られる2次元結び目への応用を考察していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究ノートの作成, 論文の解読の際, iPadを使用することで, 効率化を図る. また, コロナウイルスの影響もあり, 最近は, zoom上で共同研究や, 学会発表, セミナー発表が行われることがほとんどである. その際, リアルタイムでウェブ上のホワイトボードを用いて議論する際に, タブレットが必須となる. タブレット用のペンも必要となる. さらに録画型の学会も開かれつつあり, 音質の確保のため, 録音の際にマイクが必要となる. また, 論文の執筆のため, tex環境を整える必要があり, PCを必要とする. さらに, 最新の研究の把握のため, 論文を印刷して管理する必要があり, 印刷機, 及び, インクを必要とする. ゲージ理論は, 数理物理やトポロジー, 解析学, 代数的トポロジーなどとの関わりが強い. そのため, 必要となる専門書も幅広い.
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