研究課題/領域番号 |
20K22321
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
北村 優弥 秋田大学, 地方創生センター, 博士研究員 (70885243)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | スコロダイト / 砒素貯蔵材料 / 非鉄製錬 / 超音波 / 結晶成長促進 |
研究実績の概要 |
通常の多面形とは異なる紡錘形のスコロダイト粒子の生成機構を明らかにするとともに、紡錘形スコロダイトの砒素貯蔵特性についても明らかにすることを目的として研究を進めている。紡錘形粒子の合成は、報告例が少なく、合成に高温長時間の酸化反応が必要である。本研究では、低温短時間にて結晶性が高い紡錘形粒子を得るために超音波を使用した。二価の鉄イオンと五価のヒ酸イオンを含むpH 1.0の酸性溶液(70°C)に対して200 kHzの超音波照射、または照射せずに、酸素ガスを流入しながら3時間合成を行った。酸素ガス流入のみを用いて得られたスコロダイトの結晶化度は81%であり、Fe(II)を含む非晶質の前駆体が残存していたのに対して、超音波を用いた場合、高結晶化度(>99%)の長径6 μm以下、短径3 μm以下の紡錘形のスコロダイト粒子を合成することができた。これは、超音波照射によって生成する酸化ラジカルが前駆体中のFe(II)をFe(III)へ酸化し、結晶核の形成と結晶成長を促したことに起因すると考えられる。pH 1.0および2.0の条件にて超音波照射し、反応初期10分間の前駆体の様子をTEM観察したところ、溶液のpHに関わらず、前駆体は繊維状であることが明らかになった。しかしながら、多面形のスコロダイトが生成するpH 2.0ではpH 1.0と比べて繊維状の前駆体が密に凝集し、網目状の構造になっていた。pH 1.0の条件における生成物の収量(0.14 g)はpH 2.0の収量(0.44 g)よりも少ないため、pH 1.0の条件では、反応初期にFe(II)を含む非晶質の前駆体が生成しにくいことがわかった。そのため、紡錘形のスコロダイト粒子は、繊維状の前駆体中のFe(II)の酸化によってスコロダイトの結晶核が形成後、それを起点に結晶成長することで形成したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、超音波を使用することで既報の紡錘形スコロダイト粒子よりも低温かつ短時間で紡錘形スコロダイトの合成を行うことができ、おおむね研究計画通りに進めることができた。また、これまで報告例がない合成初期に生成する前駆体の形状と生成するスコロダイト粒子の関係を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、超音波の周波数や強度が粒子の形状にどの程度の影響を及ぼすかを把握する。また、合成した紡錘形のスコロダイトのヒ素溶出試験を行い、最終的に砒素の安定貯蔵に適するスコロダイト粒子の形状を明らかにするとともに、最適な合成条件を決定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
広い周波数に対応し、かつ出力の微調整が可能な本研究課題専用の超音波発振器を購入する予定であったが、実験の実施環境に合わせるために、超音波発振器の仕様の設計に時間がかかってしまい、本年度中に納期が間に合わなかった。次年度は、その発振器を含めて恒温循環器も購入し、実験を進めていく。
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