研究実績の概要 |
本研究では、メカノクロミックポリマー、ポリジアセチレンがどの向きに、どの程度の力を加えることでどれだけ発光するのかという「力と発光の定量的ナノスケールでの相関」を、近年自身で開発した「ナノ摩擦力顕微鏡」を導入することで解明した。メカノクロミック素材を理解する上で核となる問いを明らかにすることで、分子レベルでの力を検知するセンサへの応用開発を前進させる意義がある。
初年度の2020年はその第一歩として、ポリジアセチレンの「定量的ナノスケールでの力と発光の相関」をナノ摩擦力顕微鏡で力を加えながら蛍光顕微鏡で発光を観測することで解明した。2021年度では、この結果をさらに発展させ、「力と発光の相関」がポリマーの種類と力の方向にどのように依存するかを明らかにした。まずポリマーの種類については、 DCDA, TRCDA, PCDAの三つを比較した。この三種のポリマーは、温度を上げることにより色が変化するサーモクロミック温度がそれぞれ50, 55, 65度である。高温が必要なポリマーは大きな力が必要なのか?この問いに答えるために、「力と発光の相関」をそれぞれのポリマーで測定したところ力に関する感度がDCDA>TRCDA>PCDAであることが分かった。これは「高温が必要なポリマーは大きな力が必要」という仮説を証明し、サーモクロミズムとメカノクロミズムに関連があることを示した。力の方向依存性に関しては、ポリマーのバックボーンに対して垂直と並行など、発光を誘起しやすい角度があるのかを調べた。この実験に関しては初期データ段階であるが、発光と角度の相関がわずかに見られた。今後、データ量を増やすことで統計的にエラーに対してこの傾向が十分大きいかどうかを検証していく必要がある。
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