集光強度が10^{19-20} W/cm^2領域の高強度レーザーを、レーザー波長オーダの微細構造を有する固体物質と炭素ナノチューブ(CNT)などの背景媒質からなる混合系(構造性媒質として参照)に照射することで、特異な衝撃波構造(局在した高強度電場)が長時間保持されることがシミュレーションにより見いだされている。本研究では、この特異な衝撃波を利用すれば、現状のレーザー技術においても、医療応用可能なエネルギーと品質を同時達成する準1次元的な高エネルギーイオン加速が可能であるとの着想に基づき、この新粒子加速概念を実証するシミュレーションと理論モデルの構築、および、レーザー実験を想定した構造性媒質を作製することを目的とする。この目的のもと、本研究では以下の項目を実施した。 (1)粒子シミュレーションの実施:直径サブミクロンオーダの円柱状ケイ素(シリコンロッド)が多数配列した媒質(シリコンロッド集合体)と高強度レーザーとの相互作用を模擬する2次元・3次元粒子シミュレーションを実施した。これにより、媒質中で生成する電磁場の強度と保持時間がロッド径を変化させることで制御可能であることを見いだした。また、大規模シミュレーションのための並列化処理を含む粒子コードの整備・開発を行った。 (2)ターゲット作製:(1)を踏まえ、最新の半導体製造技術を用いて、プラズマエッチングの条件を工夫することで、高アスペクト比(高さ/直径~100)のシリコンロッド集合体の作製に成功した。併せて、レーザー照射実験を念頭に、レーザーの集光径と焦点の精緻な同定を可能にする構造物を作製した。
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