研究課題
重い電子状態から近藤状態へと移り変わる際の熱膨張の変化を調べるため、(1)熱膨張測定装置の作製、(2)CeCu6のLa希釈系La1-xCexCu6 (0.6 <= x <= 1)の熱膨張測定、を行った。(1) ストレインゲージを用いたアクティブダミー法とケルビンダブルブリッジ法による熱膨張測定装置を立ち上げた。本研究で新たに導入したDC精密電流源とナノボルトメータを組み合わせることにより、0.1μεの分解能を得た。5 K以下で生じる鉛フリーはんだの超伝導の寄与を取り除くため、ゲージリードがスポット溶接されたひずみゲージを試作した。しかし、ゲージリードの抵抗値が大きく個体差が生じるため、極低温での実用には至らなかった。そこで、5 K以下では磁場0.5~1 Tを加えることにより、はんだの超伝導の寄与を排除した。(2) 上記の熱膨張測定装置を用いて、アクティブダミー法により、1.8-300 Kの熱膨張を測定した。CeCu6(x=1)の熱膨張には、215 Kで構造相転移に伴う飛びが観測された。この飛びは、x =0.6では260 Kまで上昇した。xの減少とともに構造相転移温度が上昇する結果は、既報の中性子回折実験などの結果と整合する。15-150 Kにおける体積熱膨張係数は、xの減少と共に減少する傾向を示すことから、結晶構造の不安定化に伴ってフォノン構造が変化した可能性がある。一方、1.8-15 KのCe濃度で規格化した体積熱膨張係数はよく一致した。この結果は、重い電子状態と近藤状態は似た熱膨張を与えることを示唆する。
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Journal of Physics: Conference Series
巻: 2164 ページ: 012034~012034
10.1088/1742-6596/2164/1/012034