研究課題
本研究は,マルチコレクタ誘導結合プラズマ質量分析(MC-ICP-MS)を用いた簡便なレニウム―オスミウム(Re-Os)分析法を確立すると共に,古生代から現世に堆積した黒色頁岩・黒色泥のRe-Os分析の結果を従来のデータセットと統合し,その包括的な特徴把握を行い,貧酸素環境における堆積物のレアメタル元素の濃集メカニズムを明らかにすることを目的とする.令和3年度には,令和2年度に行った有機物に富む堆積物のRe-Os分析における酸分解の方法について検討をもとにさらに分析を重ね,分解における適切な条件を改良した.さらに,貧酸素水塊の発達するカリアコ海盆の堆積物について分析を行った.また,黒色泥・黒色頁岩の化学組成データセットについて統計解析を行った.2種類の標準試料について分析を行ったところ,全有機炭素量(TOC)の高い試料のOs分析については,従来用いられている逆王水4mlでは酸化力が不十分で測定可能なイオンビームの強度が得られなかった.また,逆王水10mlと逆王水4ml+過塩素酸1mlを比較すると,過塩素酸を加えた方がデータのばらつきが小さく,誤差も小さいことが明らかになった.それに対し,TOCの低い試料では,逆王水10mlと逆王水4ml+過塩素酸でOs濃度・同位体比に大きな違いは見られなかった.これらの結果は,試料のTOCに応じて分解に用いる酸を検討する必要があることを示唆している.カリアコ海盆最表層のRe濃度,Re濃度とTOCが正の相関を示す点は,既に明らかになっている黒海最表層の堆積物の情報と同様であり,海域による大きな違いは見られなかった.Reの濃集には,有機物への吸着が重要なメカニズムであることが示唆された.黒色泥・黒色頁岩の化学組成データセットについて独立成分分析を行い,8つの独立成分を抽出した.その中で3つの成分が酸化還元に関するものと解釈された.
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 2件)
Ore Geology Reviews
巻: 142 ページ: 104683
10.1016/j.oregeorev.2021.104683
Science Advances
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