研究実績の概要 |
従来法である液中プラズマ法の問題を解決することで、CO2排出を伴わない超高効率水素製法の実現を目指した。問題解決策として、以下の2点を実施した。 (a) 狭い断熱反応路を用いることでプラズマから周囲への熱拡散を抑える。 (b) 液体状態の高次炭化水素をキャリアガス(メタン)と混合してプラズマに供給し、プラズマ周囲に常に気体を存在させることでプラズマを安定化させる。 まず上記(a), (b) を実施するための実験系を構築した。容器に溜められた液体炭化水素(n-ドデカン)中に、パイプを通してキャリアガスを流入させバブリングすることで、液体炭化水素のミストを含んだキャリアガスの流れ(以下、原料流と呼ぶ)をつくった。そして直径 6 mm の狭小断熱反応路内で原料流をプラズマ分解し、水素を製造した。また正味投入電力を正確に測定するために、実験系に高電圧プローブ, 変流器, オシロスコープから成る電力測定システムを導入した。次に様々な条件で実験を行い、プラズマを安定して発生させるための条件を求めた。その結果、プラズマ発生時の電圧信号条件、電圧 2 kV, 周波数 19 kHz, パルス幅 1 μs に対し、キャリアガス流量 10 L/min で最も安定にプラズマを維持できることが分かった。上述の実験条件でn-ドデカンの分解を行なったところ、CO2の排出を伴わず、従来の液中法の2倍に当たる 0.26 Nm3/kWh の効率が得られた。また、原料流の流れ方向の熱回収を強化することで、更なる高効率が得られる可能性が示された。以上の成果は、超高効率水素製造実現のために有益であり、将来的に水素製造のためのエネルギーコストを低下させることで、持続型社会実現に向けた水素エネルギー普及に役立つ。
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