研究課題/領域番号 |
20K22349
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
藤間 崇 金沢大学, GS教育系, 助教 (60786325)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | 暗黒物質 / 大統一理論 / 直接検出 / 暗黒物質の加速 / EDM / ニュートリノ質量 |
研究実績の概要 |
先行研究において提案されていた擬-南部ゴールドストーン暗黒物質を含む最も単純な模型を、大統一理論の枠組みに埋め込むことに成功した。その中で模型の整合性を保つためには、電弱スケールと大統一スケールの間の「中間スケール」が比較的低い必要があることが分かった。これにより、擬-南部ゴールドストーン暗黒物質が不安定となり、現在の宇宙線からの観測的制限により質量がO(100)GeV以下でなければならないことが分かった。さらに大統一理論の予言として陽子崩壊が引き起こされることから、陽子の寿命も評価した。 加えて、媒介粒子がGeVスケールよりも軽い場合の擬-南部ゴールドストーン暗黒物質の直接検出についても調べた。これまでの先行研究では、擬-南部ゴールドストーン暗黒物質は、原子核との散乱振幅が強く抑制されることから、直接検出実験を通じての検証可能性は実質的にゼロであると考えられていた。しかし、媒介粒子の質量が数十MeVスケール程度であれば、次世代直接検出実験を用いて検証が可能であることが分かった。 既に指摘されているように、擬-南部ゴールドストーン暗黒物質の直接検出に対する感度は、暗黒物質の小さな速度により抑制される。このような場合でも、仮に暗黒物質が高速度に加速されるとすれば何らかの方法により検出可能かもしれない。この動機付けの下で、加速された暗黒物質の検証方法を調べた。太陽中心において、暗黒物質の特殊な消滅過程により一部の暗黒物質が加速されると考えられる。このときに生じる加速された暗黒物質が、大型のニュートリノ検出器において検出される可能性を評価した。 輻射ニュートリノ質量模型における電子のEDMの計算を行い、将来実験での検証可能性を評価した。計算を進める中、荷電レプトンのEDMの理論計算上、厳密にゼロになる場合があることを発見した。これをワード高橋恒等式を用いて、その構造を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、大統一理論との整合性、また初期宇宙での擬-南部ゴールドストーン暗黒物質の生成機構に関して研究を行い、学術論文として出版するに至った。学術論文については、2020年度と2021年度ともに5本ずつ、計10本の論文を出版した。研究発表については、2020年度は4つ(招待講演1つ)、2021年度は9つの研究発表(招待講演5つ)を行った。以上の研究成果から、本研究が順調に進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた研究成果を研究会や学会でさらに発信すると共に、関連分野の最新情報を収集する。 さらに本研究から派生した、加速された暗黒物質の検証方法や、暗黒物質の加速機構について研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス蔓延により、研究会や学会がオンライン開催となり、旅費の使用が少なくなった。 次年度は行動制限が緩和され、国内もしくは海外で開催される研究会や学会への参加が可能となると期待される。これらに参加し、関連分野の最新情報を交換するとともに、本研究で得られた研究成果を発表する。
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