擬-南部ゴールドストーン粒子の一種であるマヨロンと結合する暗黒物質の新模型の構築とその特徴を研究した。暗黒物質の半対消滅過程を通じて加速された暗黒物質粒子とマヨロンが同時に生成されることがこの模型の特徴である。ここで生成されたマヨロンは主にニュートリノへ崩壊することから、特徴的ニュートリノスペクトルが予言される。このニュートリノシグナルは、暗黒物質質量がO(10)MeV程度であれば、次世代ニュートリノ観測実験ハイパーカミオカンデにおいて検証可能であることを明らかにした。一方、半対消滅を通じて同時生成される速度の速い暗黒物質粒子は、銀河中心において熱平衡状態となることで圧力を生じる。その結果、銀河における小スケール問題が改善されるシナリオを考察した。これまでにも、暗黒物質の強い自己相互作用を通じた銀河の小スケール問題の改善可能性が指摘されているが、それに比べて半対消滅過程の場合では必要な相互作用の大きさは比較的小さく、十分摂動論的範囲で改善可能であることが分かった。加えて、高次量子補正を通じた新しい輻射ニュートリノ質量模型の提案とその実験的検証可能性、初期宇宙における一次相転移が従来の暗黒物質残存量計算に与える影響について詳細に調べた。以上の研究成果は3本の研究論文として既に出版されており、国内・国外における学会・研究会における研究発表を通じて当該研究成果の周知を行った。研究期間全体を通じて13本の研究論文を出版し、ここで得られた研究成果は今後、新しい別の研究に繋がる期待がある。
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