研究課題/領域番号 |
20K22350
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷崎 佑弥 京都大学, 基礎物理学研究所, 助教 (90782102)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 量子アノマリー / ゲージ理論の相構造 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,新しい対称性とそれに伴う量子アノマリーを見つけることで,ゲージ理論の相構造やクォークの閉じ込め現象の新たな側面を明らかにすることである. 昨年度の研究では,まずトポロジカル項をもつ4次元格子上のU(1)ゲージ理論の相構造を,1-form symmetryに伴うアノマリーの観点から調べた.この模型は,electric chargeとmagnetic monopoleがどちらも存在する理論になっており,強い相互作用における閉じ込め現象を記述するtoy modelの一つである.本研究では,この模型がSU(N) Yang-Mills理論と同じ対称製の構造と't Hooftアノマリーを持つことを示すことができた.これにより,oblique confinementといった奇妙な閉じ込め相がどのようにanomaly matching conditionを満たすことができるのかを明らかにすることができた. また,本研究では,2次元Yang-Mills理論を含むいくつかの閉じ込めを示すゲージ理論でnon-invertible 1-form symmetryという,これまで考えられてこなかった対称性の存在を明らかにした.多くの閉じ込めを示すゲージ理論は,quarkの間に働く閉じ込め力はN-alityとよばれる中心対称性で分類できると考えられている.しかし,実際にはCasimir scalingと呼ばれるより細かなstring tensionの振る舞いが近似的に観測されている.この新しいnon-invertible 1-form symmetryは,Casimir scalingが厳密に成立する場合にその存在が示されており,閉じ込め力の振る舞いを理解するための新しい道具になることが期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り,アノマリーを用いたゲージ理論の解析が進展しただけでなく,これまで考えられてこなかった新しい対称性としてnon-invertible 1-form symmetryの存在を明らかにすることができた.これは研究計画時点では想定していなかった発見であり,当初の計画以上に研究が進展したということができる.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究で新しい対称性を発見できたので,今後はこれまでの研究の方向性に加え,この新しい対称性がより現実的な4次元ゲージ理論でも存在するのかを明らかにしたい. とくに,large-N極限をとったゲージ理論ではlarge-N factorization theoremが成立するおかげで,時空の次元によらずにnon-invertible 1-form symmetryが存在するのではないかと予想しているので,latticeの強結合展開やgravity dualなどの計算と組み合わせてこの予想を検証したい. また,さらに発展させてnon-invertible 1-form symmetryにともなう't Hooft anomalyが存在するのか,ということを考えることで,もともと掲げていたゲージ理論の相の解析という目標とうまく研究をまとめていきたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ渦が長引き,予定していた学会参加や共同研究のための出張ができずに,次年度使用額が生じた. 本年度は,昨年予定していた学会参加や出張を行い,研究計画を遂行したいと考えている.
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