研究実績の概要 |
本研究では北陸地方の日本海沿岸部で発生する冬の雷に着目し、雷放電から放出されるガンマ線である「地球ガンマ線フラッシュ」を観測することで、雷における強電場領域がどのように電子を相対論的なエネルギーまで加速・増幅しているか、を明らかにする。北陸冬季雷は雷雲の発達高度が低いため、発生したガンマ線が大気による減衰をあまり受けずに地上に到達するため、地上観測の絶好のターゲットである。2020年度はガンマ線を観測する小型の線量計の開発に着手した。線量計の基礎設計を行い、プラスチックシンチレータと光電子増倍管を組み合わせることに決めた後、電子回路系基板を設計、プロトタイプの制作を行った。制作したプロトタイプについては放射線源やLEDなどの照射による性能評価を行った後、改良に向けた開発や試験などを進めた。 また石川県金沢市を中心にガンマ線検出器の2020年度の設置を進め、2020年11月以降に観測を開始しており、観測データの蓄積を進めた。加えて雷放電の種となる雷雲から放出されるガンマ線の事象についても解析を進め、雷放電の観測ネットワークや国土交通省のXバンド気象レーダー、降水粒子判別器などのデータを比較することで、雷雲からガンマ線が放出される時の気象条件や、上空の降水粒子分布を明らかにし、論文として出版した (Wada et al., 2021, Meteorological aspects of gamma-ray glows in winter thunderstorms, Geophysical Research Letters, 48, e2020GL091910)。
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