研究課題/領域番号 |
20K22356
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
辻 直美 国立研究開発法人理化学研究所, 数理創造プログラム, 特別研究員 (50878444)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 宇宙線 / ガンマ線観測 / X線観測 / 最高エネルギー宇宙線 |
研究実績の概要 |
宇宙空間を満たす高エネルギー荷電粒子(宇宙線)の起源、中でも、物理学におけるエネルギーフロンティアである最高エネルギー宇宙線(E>1 EeV; Ultra high energy cosmic ray; 以下、UHECR)の起源は全く解明されていない。UHECRは宇宙背景放射と相互作用することで、天体の周囲にハローと呼ばれる電子陽電子のプールが形成される。このUHECR由来のハローからの電磁波を測定することで、一次粒子の情報を間接的に引き出し、UHECRの生成メカニズムを検証することが出来る。本研究では、UHECRの加速源候補天体である活動銀河核、銀河団、スターバースト銀河などを観測対象とし、ガンマ線観測とX線観測を組み合わせることで、加速源周囲のハローを探査する。 ガンマ線解析には、TeV望遠鏡HESSによって撮られた観測データを用いる。本年度は、HESSのデータ解析に必要な環境を整備し、本研究に用いるデータセットの選定を行った。研究対象として、これまでにHESSにより十分観測の行われてきた、活動銀河核M87、スターバースト銀河NGC 253を取り扱う。これらの天体は、X線観測も十分行われていることを確認した。M87やNGC 253の本格的な解析を行う前に、標準光源であるかに星雲と、TeVガンマ線で明るい銀河系外の活動銀河核PKS 2155-304のHESSのデータ解析を行った。従来の解析ツールHAPに加えて、オープンツールであるGammapyも用いた。概ね先行研究の結果を再現することができ、本研究の下準備を整えることができたと言える。特にかに星雲についてはガンマ線の広がりも確認した。これはUHECR由来のハローを捉える上でも必要な解析である。また、HESSの運用当番やコラボレーション会議での発表などを通して、初年度からコラボレーションへ貢献した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、TeVガンマ線とX線の観測を組み合わせて、研究を推進することが重要である。X線は基本的に公開データを使用することができる一方で、ガンマ線はTeVガンマ線望遠鏡HESSのコラボレーション内のみで取り扱うことができる。そのため、HESSを運用する機関に出向き、コラボレーションの研究員に解析の指導を仰ぐ必要があった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で海外の研究機関への出張ができず、オンラインでの研究打ち合わせに留まっているため、思うように計画を推進することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに取得したHESSの解析手法を、研究対象とする天体(M 87やNGC 253など)に適応する。この時、既に報告されている中心部からの放射成分を取り除き、周りに広がった天体の有無を検証する。研究経過については、随時共同研究者に報告し、議論を並行して進める。X線観測データも同様な解析を行うが、X線解析については研究代表者が全面的に担当する。 可能であれば、HESSを運用する研究機関を訪れ、TeVガンマ線のデータ解析を推進する。出張が出来ない場合も、オンライン会議により、共同研究者と連絡を取り合い、研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外の研究機関への出張を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で出来なかったため、その分の費用を次年度に持ち越している。
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