宇宙線とは、宇宙空間を飛び交う高エネルギー荷電粒子のことである。これまでに10桁以上に渡るエネルギー範囲で宇宙線が観測されており、中でも約10の18乗電子ボルト以上のエネルギーを持つ宇宙線は最高エネルギー宇宙線 (Ultra high energy cosmic ray; 以下、UHECR)と呼ばれており、その起源は全く解明されていない。UHECRは宇宙背景放射と相互作用することで、天体の周囲にハローと呼ばれる電子陽電子のプールが形成される。このUHECR由来のハローからのX線やガンマ線を測定することで、一次粒子の情報を間接的に引き出し、UHECRの生成メカニズムを検証することが出来る。 本研究は、ガンマ線解析にTeV望遠鏡HESSによって撮られた観測データを用いる。UHESRハロー探査に適していると思われる活動銀河核やスターバースト銀河を選定し、データ解析に着手した。ガンマ線の空間分布とスペクトルを明らかにした。さらに、X線のデータ解析にも取り組んだ。チャンドラ衛星、XMM-Newton衛星のデータを用い、X線のイメージとスペクトルを取得した。 また、HESSの解析ソフトウェアであるHAPの解析性能の評価、改善にも貢献した。HESSは4台の小口径望遠鏡と1台の大口径望遠鏡から成るが、ガンマ線イベントが測定される望遠鏡の数によって再構成の精度などが異なり、その影響を調査した。このような多数の望遠鏡を用いたステレオ観測の観測精度の向上は、将来のCTA望遠鏡で重要となり得る。
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