研究実績の概要 |
【本研究の背景】 宇宙再電離現象とは, 宇宙誕生後およそ2-10億年に起きた宇宙空間の最後の相転移を指す。主に初代星や初代銀河の放射する電離光子によって引き起こされたと考えられているが, 未解明な部分が多く現代天文学におけるフロンティアの一つである。再電離の過程を理解するためには, 当時代にあった超遠方銀河の放射する電離光子を理解することが重要である。しかし, 超遠方銀河の放射する電離光子は原理的に観測できない。そこで近年注目を浴びる手法が, 電離光子を観測できる近傍宇宙に存在し, かつ宇宙再電離時代の銀河に性質が近い「アナログ天体」を用いて間接的に超遠方銀河からの電離光子放射の過程を明らかにすることである。特に重要なのは、銀河から銀河外へ漏れ出し、再電離へ寄与した電離光子の割合 (脱出率) を定量評価することである。 【具体的内容、意義】 従来の研究では紫外線や可視光の光学特性と電離光子脱出率を結びつける試みが主流であった。本研究では、初めて銀河の遠赤外線の性質に着目し、電離光子脱出の物理と結びつけることを目指す。遠赤外線を用いる利点は、(i) ALMA 望遠鏡とのシナジー: 近年、ALMA によって超遠方銀河の遠赤外線の性質が明らかになった。本研究が完成すれば、ALMAの研究を宇宙再電離研究の文脈に強力に位置付けることが可能である。(ii) 従来見逃されることが多い、電離光子のダスト吸収の影響を調査できる点である。対象天体は、アナログ天体のうち、電離光子脱出率が実際に測定されている3天体である。このうち2天体でSOFIA望遠鏡のデータを研究代表者が取得した。現在は、データ解析を進めている段階である。
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