研究課題/領域番号 |
20K22360
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
大木 平 愛媛大学, 宇宙進化研究センター, 研究員 (90792078)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
|
キーワード | 超巨大ブラックホール / 活動銀河核 / 銀河形成 / 銀河進化 / 宇宙の大構造 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、銀河中心に普遍的に存在する超巨大ブラックホールへのガス降着過程と、その重力エネルギー解放により発現する活動銀河核の放射過程が、活動銀河核の統計量にどのような影響を与えるのかを明らかにすることである。そのために、銀河から超巨大ブラックホール周辺までのガス降着過程を取り扱う新たなガス降着流モデルを構築する。そして、スーパーコンピュータを用いた最新のN体シミュレーションをベースにした準解析的銀河・活動銀河核形成モデルを構築し、予言される活動銀河核の統計量がモデルにどのように依存するかを検証する。さらに、現在進行中である大規模サーベイ観測との比較を通じて、超巨大ブラックホールの成長と銀河の進化を結びつける「共進化過程」を明らかにする。 超巨大ブラックホールへのガス降着過程は、ガス円盤の角運動量損失のタイムスケールを考慮してモデル化している。また、超臨界ガス降着段階の活動銀河核の放射効率もモデルに組み込んだ。そして、スーパーコンピュータ「京」によるN体シミュレーションに基づいた準解析的銀河形成モデルを構築し、世界トップレベルの精度で活動銀河核の空間相関を理論予言した。これを観測と比較することにより、我々のモデルが観測結果とよく整合することが分かった。 現在、ガス降着過程の物理モデルを導入中である。ガス降着のタイムスケールを変化させ、それが活動銀河核光度関数にどのような影響を与えるかを調べている。 また、我々のモデルを、国立天文台のスーパーコンピュータ「アテルイII」を用いた新たなN体シミュレーションに適用することを可能にした。これに伴い、銀河形成モデルパラメータのチューニングを行った。これにより、他に類を見ない広い計算領域で銀河・活動銀河核モデルを得ることが可能になる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
次世代観測機器に対応した観測量の予言を可能にするためのモデル改訂に時間を要した。そのため、本研究の計画の一つであるモデル銀河・活動銀河核カタログの公開準備に遅れが生じたが、現在のところ、カタログ準備の目処が立ってきている。今後ガス降着モデルの改良も含め、計画の遂行を加速していく。
|
今後の研究の推進方策 |
銀河・活動銀河核モデルの改良を続ける。特に、超巨大ブラックホールへのガス降着過程の物理モデル構築に注力する。 また、モデルが観測によりどのように制限されるかを明らかにするため、空間統計量の観測との比較のための解析を進め、ガス降着過程との関わりを詳細に調べる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染拡大対策として出張が無くなり、旅費の支出がゼロになったため。 また、モデル銀河・活動銀河核カタログの整備に時間を要し、想定以上のデータ容量が必要になったため、大規模データ用のストレージと新たなファイルサーバの購入を再検討している。 余剰分を次年度の大規模データ用のストレージと新たなファイルサーバの購入等に充てる。
|