研究課題
本研究の目的は、銀河中心に普遍的に存在する超巨大ブラックホールへのガス降着過程と、その重力エネルギー解放により発現する活動銀河核の放射過程が、活動銀河核の統計量にどのような影響を与えるのかを明らかにすることである。そのために、銀河から超巨大ブラックホール周辺までのガス降着過程を取り扱う新たなガス降着流モデルを構築する。そして、スーパーコンピュータを用いた最新のN体シミュレーションをベースにした準解析的銀河・活動銀河核形成モデルを構築し、予言される活動銀河核の統計量がモデルにどのように依存するかを検証する。さらに、現在進行中である大規模サーベイ観測との比較を通じて、超巨大ブラックホールの成長と銀河の進化を結びつける「共進化過程」を明らかにする。超巨大ブラックホールへのガス降着過程は、ガス円盤の角運動量損失のタイムスケールを考慮してモデル化している。また、超臨界ガス降着段階の活動銀河核の放射効率もモデルに組み込んだ。そして、スーパーコンピュータ「京」によるN体シミュレーションに基づいた準解析的銀河形成モデルを構築し、世界トップレベルの精度で活動銀河核の空間相関を理論予言した。これを観測と比較することにより、我々のモデルが観測結果とよく整合することが分かった。また、ガス降着のトリガーモデルを変更し、それが活動銀河核光度関数にどのような影響を与えるかを調べた。そして、次世代観測装置によるAGNサーベイに向けた理論予測を行い、Euclid-deep サーベイによって赤方偏移約6で低光度AGNの光度関数を制限できることを明らかにした。さらに我々のモデルを、スーパーコンピュータ「アテルイII」を用いた新たな大規模N体シミュレーションに適用して、モデル銀河・活動銀河核カタログ Uchuu-ν2GC を構築し、web上で公開した。これは、他に類を見ない広い計算領域を扱うモデルカタログである。
我々の準解析的銀河形成モデルを、国立天文台のスーパーコンピュータ「アテルイII」を用いた大規模N体シミュレーションに適用し、モデル銀河・活動銀河核カタログ Uchuu-ν2GC を作成、公開した。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件) 備考 (1件)
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
巻: 518 ページ: 157-173
10.1093/mnras/stac2930
https://www.skiesanduniverses.org/Simulations/Uchuu/DR2Products/