昨年度作成したダイヤモンド高圧セルと高温度実験用のチャンバーを用いて、高温高圧実験を試みた。液体窒素を使って液化させたアンモニアを金属チューブからサンプルチャンバーへ導入し、封入を図った。しかし、高温発生時に用いるヒーターが金属チューブと接触することでアンモニア試料の封入が難しいことが判明した。本研究では、液化装置が必要なアンモニアではなく、天王星、海王星のもう一つの主要物質である氷に試料を変更することにした。 氷の超イオン相についてはこれまで多くの実験研究によって調査されている。イオン伝導率測定も過去には行われているが、固体内でイオンが伝導するメカニズムについては未解明のままである。氷の超イオン相は水素イオンがキャリアとなって伝導するため、イオン伝導率は水素の質量に大きく依存するはずである。我々は、電気的性質を維持しながら質量が異なる重水の氷の相関係の決定を目指す。そして、これと氷の相関係を比較することで、水のイオン伝導機構の解明につながると考えて、ラマン分光測定に基づいた重水の氷の融解実験を試みた。 高温高圧試料の分析に適したラマン分光装置を導入した。検出器に熱が伝わらないように1.5 m離れた位置に試料台を設置した。高温度環境では、ラマンのシグナル強度が著しく減少することを考慮して、高感度検出器を新たに導入した。ネオン標準ランプを使って絶対波長測定を行えるように波長校正を行なった。重水の氷の融解実験を行なった。作成したダイヤモンドアンビルセルを使って2 GPaまで加圧された試料を加熱することで融解に伴って試料の見た目が変化することを確認した。この時、熱電対がショートしていたため温度決定には至らなかったが、過去の融点結果から約100度まで加熱されていたことが推測される。このように、作成した高圧セルを使って高温高圧条件の発生に成功した。
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