本研究では、過去のアナログ記録を用いて、激甚宇宙天気現象の検討について、その実現可能性を検証した。最終年度たる本年度においては、キャリントン・イベントの地磁気擾乱規模についてこれまでしばしば根拠として用いられながら学術コミュニティにはアクセスが極めて困難だった当時の盆梅の地磁気計測記録について、海外文書館からそのコピーを入手し、地磁気水平成分の擾乱規模を大きく改訂したのみならず、これまで知られていなかった地磁気の東向き成分(Y成分)、 鉛直下向き成分(Z成分)について新たなデータが導出されたほか、既存の水平成分(H成分)やCME速度などついても先行研究の知見を大きく改訂した。過去の太陽表面の様子についても、複数の事例で、アナログ記録(太陽面スケッチなど)を用いて復元についての事例研究を進めた。国際地球観測年(1957-1958)の激甚宇宙天気現象については、本邦各所のオーロラ観測記録を検討することで、当時のオーロラの低緯度境界の広がり、時間発展の様子、地磁気変動の時間発展との整合性などを明らかにした。1940年3月の激甚宇宙天気現象について、過去の太陽面観測、地磁気観測、オーロラ観測などを組み合わせることで、当時の太陽フレア、地磁気擾乱、オーロラ低緯度境界、宇宙線変動などの物理量を定量復元し、その時間発展も明らかにした。このような試みは、過去のアナログ記録の検討から、宇宙天気の編年を既存データベースから過去に大きく延伸し得る可能性を明らかにした。
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