研究課題/領域番号 |
20K22368
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
金子 善宏 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10880255)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | 破壊伝播方向 / 断層条線 / 大地震 / 動的破壊シミュレーション |
研究実績の概要 |
強震動予測に基づく地震ハザードは震源断層の場所、地震の大きさ、その頻度と破壊伝播方向に強く依存する。現在、活断層トレンチングによる古地震学的観測から、大昔の大地震の場所、大きさ、頻度を推定することはできるが、破壊伝播方向を知ることは不可能である。このことは、世界的に正確な地震ハザード予測において、深刻な欠点である。この問題を解決するため、地震により形成された断層面の擦り傷「条線」の特性に着目し、断層の破壊伝播方向を古地震学的観測から推定することが可能か検証した。
2021年度の研究実施計画に沿い、条線の特性が複雑な断層形状によりどのような影響を受けるのかを、簡略化された平面でない断層を取り入れた動的破壊モデルや形状が粗い断層(rough fault)を含むモデルを構築し、数値解析を行った。その結果、断層形状の影響により条線の湾曲方向が逆向きになるという過去の観測を再現することに成功した。また、パラメータの異なる数値計算を数多く実行し、条線の湾曲の特性と断層形状の関係やその物理的要因を明らかにした。さらに、実際の活断層への適用性を判断するために、淡路島にある野島断層の調査を行った。本研究の結果は、地質学的な条線観測から破壊の伝播方向を推定する際に断層形状の複雑性を考慮する必要があることを明示している。加えて、数多くの条線記録が残っている2011年に起きたマグニーチュード6.6の地震に着目し、それらの条線の詳細な軌跡を動的破壊モデルを用いて再現することに成功し、その結果を国際誌に掲載した。これらの新しい知見・研究結果を国際学会(AGU Fall Meeting)や日本地震学会秋季大会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
おおむね研究実施計画どうりに進展しているが、複雑な断層形状を取り入れたモデルの結果をまとめた論文の作成・投稿に時間がかかっている。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、議論を進める予定であった国際共同研究者との研究に遅れが生じたことや、度々の在宅勤務の影響により効率的に研究が進行しない時期があったためである。
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今後の研究の推進方策 |
複雑な断層形状を取り入れたモデルの結果を論文としてまとめ、国際誌に投稿する。また、研究結果を国際学会(JpGUやAGU Fall Meeting)にて発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、国内・国際学会の旅費が未使用となった。また、新型コロナウイルスの影響により、議論を進める予定であった共同研究者との研究に遅れが生じたことや、度々の在宅勤務の影響により効率的に研究が進行しない時期があった。繰り越した額は、次年度の国内・国際学会の旅費・参加料に充てる。また、OAを雇用し研究を効率良く行う予定である。
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