研究課題
初代銀河に相当する非常に金属量の低い銀河を観測・理論的に探るプロジェクトを率いることで、未だ多くの謎が残されている銀河形成の最初期段階の研究を牽引する。初年度である2020年度には、まず機械学習(CNN)を用いた銀河の選択手法の最適化を行った。光電離モデルによってこれまで以上に金属量の低い銀河のモデル化に成功し、教師データとして与えることで機械学習を改善し、大きな銀河サンプルの構築に至った。並行して追分光観測を行い、新たに選択された銀河の低金属量を実際に確認できた。本結果をPIとして査読論文へまとめている。更に、本選択手法をより遠方宇宙へ応用する方法を確立し、これまで近傍でのみ見つけられていた極低金属量銀河に相当する銀河を赤方偏移2(100億年前の宇宙)で探査することが可能となった。候補天体の金属量同定を目的とし、すばる望遠鏡へ分光観測の提案書をPIとして提出している。その他、近傍から遠方にかけて金属量の低い銀河を特徴づけるために必要な多波長観測データを獲得するために国際競争的に提案書をPIとして作成・提出している(すばる望遠鏡、Keck望遠鏡、Chandra X線観測衛星、James Webb宇宙望遠鏡)。また、研究協力者とともに提案した極低金属量銀河の面分光観測プログラムが採択され、その観測の計画および遂行をリードした。極低金属量銀河の空間分解された細かい性質の理解へと研究を発展させている。当初の研究計画に従って順調に研究を進めているとともに、新たな観測プログラムへの進展もあった。これらのプログラムを次年度に完遂させる。
2: おおむね順調に進展している
機械学習の開発にうまく成功したため。とりわけ、近傍だけでなく遠方の宇宙(赤方偏移2)の銀河に対しても当初の目標通り機械学習選択手法を応用させることができた。多波長追観測に関しては、X線から可視の高電離輝線にいたるまで幅広いエネルギー範囲を調べることが星形成を正しく理解する上で必要不可欠である。国際競争による望遠鏡観測時間獲得のための提案書を4本PIとして提出している。また、研究協力者とともにすばる望遠鏡に提出した極低金属量銀河の面分光観測プログラムが採択され(計2年間)、その観測計画・遂行および銀河内部の金属量・電離状態分布を探る研究をリードしている。
最適化させた機械学習に基づく極低金属量銀河の性質をまとめた論文をPIとしてまとめる。また遠方宇宙で新たに見つけられた銀河が分光的に検証でき次第、PI論文として発表する。多波長観測研究としては、X線や紫外の高エネルギーの性質のみならず、星形成に欠かせないガス(原子、分子)の性質を観測的に調べることの重要性に研究を進める中で気がついた。そのために必要な電波域での観測をするためALMAやFAST等への観測提案をPIとして行う計画である。若い銀河の中にどのくらいのガスが存在し、そこからどのような星形成(とりわけ大質量の星形成)が行われ、金属が形成されるのか。最適なサンプルを対象に独自の多波長観測を行うことで迫る。また、若い銀河の観測・理論双方の研究者を集めた研究会を開くことを計画している。双方の研究の現状を把握しあい、初期の星形成・化学進化を明らかにする上で鍵となる観測的アプローチを理論研究者とともに議論し、観測提案へと発展させることを目指す。
研究協力者とのミーティングや研究会等への参加(旅費)が新型コロナウイルス感染拡大の影響で当初の予定より大幅に無くなったため。また、Mac Pro計算機を購入予定であったが、Apple社が最近高性能の自社製チップを搭載した計算機へMac各機種をアップグレードし始めていることから、次年度Mac Proのアップグレードまで導入を見送ったため。次年度には、今年度購入を見送った計算機と必要な周辺機器の購入、および徐々に再開され始めた観測や解析等に必要なミーティング・出張等への旅費として繰越分を使用する計画である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (2件)
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