研究課題/領域番号 |
20K22374
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
木邑 真理子 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 基礎科学特別研究員 (40879699)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | 降着円盤 / 不安定性 / 活動銀河核 / 矮新星 |
研究実績の概要 |
今年度は前年度の続きとして、矮新星の研究を行った。矮新星は降着円盤を持つ天体の中で一番シンプルな構造を持ち、観測しやすいため、降着円盤の物理現象を調べるのに適した天体である。本研究では、矮新星の研究で得た知見を応用し、巨大な降着円盤を持つ活動銀河核の研究も行うことも目的としているため、今年度の研究はその土台作りという点でも重要である。 今年度は、KIC 9406652という傾いた円盤を持つ矮新星について、可視光のorbital light curveのモデリングを行った結果を査読論文として発表した。この研究により、KIC 9406652の伴星が傾いた円盤からの照射を受けていることを再確認し、光度変動の観測とそのモデリングだけから天体の軌道傾斜角と円盤の傾き角に制限をつけることに成功した。また、2020年度に取得した矮新星SS CygのX線・可視光同時観測データを解析し、結果をまとめ、査読論文として発表した。SS Cygは多波長域で明るく、よく調べられてきたが、2021年から静穏時の光度が多波長域で上昇したまま低振幅のアウトバーストを頻繁に繰り返すという、100年に1度の異常な現象を示した。私達は、この異常な振る舞いが円盤粘性の上昇に起因すると示唆した。この示唆は、IW And型矮新星やZ Cam型矮新星の光度変動を円盤不安定モデルを用いて説明する手がかりとなる可能性があり、矮新星の多様な光度変動を説明する、円盤不安定モデルを用いた統一モデルの構築に貢献すると考えられる。この研究成果を含んだ内容を、東京大学・大阪大学のセミナーでそれぞれ発表した。さらに、SS Cygの観測結果を再現するため、円盤不安定の数値シミュレーションを多数行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年5月から2022年5月まで、産休・育休を取得し、研究を中断していた。休暇取得以前は研究が順調に進展しており、これまでの成果の半分以上を論文化することに成功したが、休暇中に数値シミュレーション結果をまとめ、論文化することができなかったため、評価を(3)とした。
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今後の研究の推進方策 |
まず、2022年度は、2021年度に産休・育休を取得して中断していた矮新星の数値シミュレーションの研究を継続し、論文化する。すでに数値シミュレーションのメインの部分は完了しており、共同研究者と相談の上、論文の構成を練っていく予定である。 また、所属研究グループのメンバーと議論し、活動銀河核の研究も始める。すでにX線望遠鏡NICERによって観測されている活動銀河核の中から、矮新星と同じく円盤不安定が関わっているかもしれない、changing-look現象を示す天体を選び、データ解析を行う予定である。 並行して、これまでの研究成果については、国際会議・国内学会で発表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
産前産後休暇と育児休暇取得のため、研究を一年中断しており、研究費を使用できなかった。また、COVID-19の流行により、自ら岡山観測所に出張して観測する機会がなかった。 次年度使用額は、これまでに得た成果を学会で発表する際や共同研究者との議論の際の出張費用として使用する予定である。
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