• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

観測と理論の両面から探る矮新星の降着円盤の不安定性と活動銀河核への応用

研究課題

研究課題/領域番号 20K22374
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

木邑 真理子  国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 基礎科学特別研究員 (40879699)

研究期間 (年度) 2020-09-11 – 2024-03-31
キーワード矮新星 / 降着円盤 / X線観測 / 数値シミュレーション / 粘性 / 白色矮星
研究実績の概要

2022年度は、矮新星の数値シミュレーションとX線観測データの解析を行い、成果を論文化した。前年度に出版した論文(Kimura et al. 2021c)で議論した、はくちょう座SS星の2021年の変則的なアウトバーストの数値シミュレーションを行った。その結果、変則的なアウトバーストの前兆現象は、観測論文で示唆していたように円盤粘性の増加で、変則的なアウトバーストは、伴星から輸送されるガスが円盤をオーバーフローして円盤内側まで到達することで説明できる可能性が高いと分かった。この成果は、Kimura & Osaki (2023)として出版済である。
また、2021年から2022年にかけてアウトバーストを起こした矮新星AT2021afpiのX線データをNICER望遠鏡を用いて取得し、解析を行った。その結果、通常の矮新星よりも酸素とネオンのラインが強いことを発見した。このことは、この天体が持つ白色矮星が酸素・ネオンガスの多い白色矮星であることを意味するため、X線データを用いて白色矮星の質量を求めた結果、チャンドラセカール限界質量に近い可能性があることが分かった。もしこの見積もりが正しければ、この天体は将来ミリ秒で自転する中性子星と軽い恒星の連星系になると考えられる。どのようにしてミリ秒で自転する中性子星が誕生したかはよく分かっておらず、理論予想値と観測で見つかっている天体の個数にギャップがあるため、この研究により、白色矮星と軽い恒星の連星系からの進化経路の研究が進むと考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

矮新星に関する部分は、観測した現象を数値シミュレーションで再現でき、順調である。AT2021afpiの観測により、予想以上の進展があった。一方で、活動銀河核への応用は進んでいないため、今後の課題である。

今後の研究の推進方策

今後は、矮新星の研究で得られた知見を活動銀河核など他の天体の研究に応用する。共同研究者との議論の中で、近年の観測の進展具合から、活動銀河核に応用する前に、まずより重要度が高く確実に円盤不安定が起こっていると考えられるブラックホールと普通の恒星の連星系(ブラックホール連星)に応用するのが良さそうであると分かった。そのため、一部の計画を変更し、ブラックホール連星の数値シミュレーションを行う。
また、これまでの研究成果を6月、9月の国際学会で発表する。

次年度使用額が生じた理由

矮新星の研究の応用について、うまくいかない部分や計画を一部変更した部分があり、2023年度もこの研究に充てたいと考えた。また、コロナ禍で国際学会が2度延期になり、2023年度に持ち越されたため。研究成果をその学会で発表する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] The light curve simulations of the 2021 anomalous event in SS Cygni2022

    • 著者名/発表者名
      Kimura Mariko、Osaki Yoji
    • 雑誌名

      Publications of the Astronomical Society of Japan

      巻: 75 ページ: 250~268

    • DOI

      10.1093/pasj/psac106

    • 査読あり
  • [学会発表] 矮新星 MASTER OT J030227.28+191754.5 における、アウトバースト中のX線放射の起源2023

    • 著者名/発表者名
      木邑真理子
    • 学会等名
      日本天文学会春季年会
  • [学会発表] 矮新星の多波長観測が拓くサイエンス:SS Cygの可視光・X線の同時観測を例にとって2022

    • 著者名/発表者名
      木邑真理子
    • 学会等名
      激変星研究会 2022
  • [学会発表] 矮新星 SS Cygにおける2021年の異常な光度変動とその前兆現象の正体2022

    • 著者名/発表者名
      木邑真理子
    • 学会等名
      日本天文学会秋季年会
  • [学会発表] Optical & X-ray simultaneous observations of the brightest dwarf nova SS Cyg2022

    • 著者名/発表者名
      木邑真理子
    • 学会等名
      連星系・変光星研究会2022
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi