近年の観測により明らかになってきた、矮新星アウトバーストの多様性を理解するため、円盤不安定モデルの数値シミュレーションを行った。これまで考えられていなかった、これまでのシンプルなモデルにプラスして、伴星から輸送されるガス流が円盤外縁部をオーバーフローする効果を取り入れることで、矮新星SS Cygの2021年の異常な光度変動を再現することに成功した。また、長年の未解決問題である、Z Cam型矮新星のstandstill現象がなぜ起こるかについても、新しいモデルを考える土壌ができた。 IW And型矮新星について、観測データの解析を行い、negative superhumps、orbital signals、super-orbital signalsの時間進化を詳細に調べることで、この天体の降着円盤が連星軌道面に対して傾いている直接の証拠を初めて捉えることができた。orbital signalsのモデリングを行い、傾いた円盤による伴星の照射を可視化することができた。 これらの研究成果の一部は査読論文として出版されている。 最終年で度は、これまでの研究成果を国内会議や国際会議で発表した。また、数値シミュレーションコードをX線連星や活動銀河核など、幅広い天体に応用できるようにするため、円盤内縁半径を可変にするためのコードの改良を行った。また、将来円盤風などのアウトフローの効果を取り入れるため、他機関の研究者と議論した。
|