「すざく」観測データに基づき 2006 年から 2014 年にかけての長期的な変動を調査し、木星本体からのX線放射 (オーロラでの電荷交換反応輝線、大気表面での太陽X線散 乱) が 2-5 倍と大きく変動したのに対し、木星磁気圏に広がった硬X線放射に優位な変動が見られないことを突き止めた。さらにこの広がった放射について、木星磁気圏の粒子分布モデル (Divine-Garrett モデル) から理論的に見積もった放射強度と比較し、モデルが粒子密度を 10-100 倍程度過小評価している可能性を指摘した。以上の成果は投稿論文としてまとめ、最終年度 PASJ 誌から出版された。 データ解析における技術的な観点から XMM-Newton 衛星による検証を NuSTAR 衛星での検証に切り替えて実施した。これには「すざく」のデータ解析と同様に、天球座標上での木星の移動を補正する必要があった。本研究の成果として、NuSTAR データのための補正ツールを独自に開発し、木星からの硬X線放射 (>~5 keV) の撮像・分光情報を得た。知る限り「すざく」や NuSTAR での座標補正ツールは他になく、木星以外の太陽系天体にも利用できる点で今後の展開に期待できるものと考える。 計画の主柱の一つであった XRISM 衛星搭載マイクロカロリメータによる木星オーロラの電荷交換反応輝線の観測は、XRISM 衛星の打ち上げ延期によって本実施期間中に実現できなかったが、本研究課題の一部として初期観測の候補天体に申請し Priority C で採用された。今後の研究項目として事業期間後も継続したい。
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