研究実績の概要 |
本研究課題は、原始星段階から原始惑星系円盤(以下、"円盤")までの化学構造計算と系外惑星大気の化学構造計算等を通じ、最新の観測結果による裏付けも踏まえた現実的な惑星形成理論を構築する事を目的とした。 まず原始星段階から円盤散逸期までの物理構造と化学構造の時間進化を同時に扱うモデルの構築を進めた。具体的には中心原始星のX線放射が周囲のエンベロープおよび円盤の化学進化に与える影響や、H2Oスノーライン以遠にダスト濃集に伴う影構造(低温領域)が形成された円盤におけるスノーライン位置や組成分布、元素組成比が受ける影響等を、詳細な化学反応ネットワーク計算を通じ調べた。計算結果を元に、円盤内で形成される惑星大気の組成や、彗星・小惑星の組成への影響も議論した。これらの結果をまとめた複数の査読付き主著論文が既に出版済みである。2022年度は上記の研究の深化に加え、ダスト進化や電離率、乱流度等の円盤内空間分布に関する研究の最近の進展を踏まえ、これらの効果を取り入れた化学構造計算に向けた議論も進めた。更に並行して、原始星天体および円盤のスノーライン位置や分子組成分布の同定を目指した分子輝線観測(ALMA, 野辺山45m)や将来観測検討(GREX-PLUS, ngVLA, LST等)も各波長の望遠鏡に対して進めた。また電波・赤外線観測分野それぞれの将来計画検討会において招待講演も行い、研究・検討成果を紹介した。 また、惑星大気中の元素組成比としてEistrup et al. (2016)の複数の円盤化学進化モデルの場合の値を採用した上で系外ガス惑星大気の化学平衡計算を行い、円盤化学進化が惑星大気の化学構造に与える影響や、惑星形成環境を制限可能なC/O比の組み合わせ等について議論した。上述の影構造を持つ円盤で形成される惑星大気の特徴についても、N/O比などに着目して議論を進めた。
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