2021年度は、本研究の第一目標である、超臨界状態における二酸化炭素中の非定常熱物質輸送の定量計測について、前年度に引き続き着手した。本研究では、超臨界二酸化炭素中の複雑な熱物質輸送現象を理解するために、まず熱輸送現象に着目した評価を行った。超臨界二酸化炭素を前年度に構築した可視化容器に導入し、容器壁面と流体中に任意の温度差を与えた。温度場は、高速位相シフト干渉計を用いて可視化した。実験結果として、臨界点近傍(313 K、8 MPa)では、場のわずかな温度変化による熱物性値の急激な変化により、干渉計では定量評価が困難な複雑な熱輸送現象が観察された。一方で、臨界点遠方(323 K、8 MPa)の領域においては、代表長さが大きい場合は、自然対流が生じ移流を含む熱輸送が確認できた。代表長さを小さくした低レイリー数領域では、移流の影響が抑えられ、熱拡散支配による明瞭な干渉縞の計測に成功した。さらに干渉縞の非定常変化から推定した熱拡散率は文献値と比較して妥当な値であった。 物質輸送現象については、模擬汚染物質としてアセトンを選定した。超臨界流体中での実験の比較対象として、空気中におけるアセトン蒸発による濃度変化を、位相シフト干渉計を用いて定量計測した。さらに実験結果を用いて、対流の影響を考慮した物質輸送現象のモデル化を達成した。超臨界二酸化炭素中での物質輸送実験には及ばず、今後の課題となったが、今後の研究の展開において重要な知見を得た。 さらに本年度は、本研究の第二の目標である、溶解現象のモデル化に着手した。計算条件は昨年度の課題も考慮した上で、実験結果を基にした温度圧力条件を設定し、模擬汚染物質であるアセトンの超臨界二酸化炭素中への溶解現象を数値モデル化することに成功した。 これらの研究成果は国内外の学術会議にて発信してきた。さらに、ここまでの研究成果は国際学術論文として投稿予定である。
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