研究課題/領域番号 |
20K22384
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
榊間 大輝 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (50884194)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 4H-SiC / 転位 |
研究実績の概要 |
次世代パワーデバイスとして期待される4H-SiCパワーデバイスでは、順方向動作中に積層欠陥が急速に拡大する事によりデバイス性能が劣化する「順方向劣化現象」が問題となっている。順方向劣化時の積層欠陥拡大は、電気的なエネルギー低下、積層欠陥エネルギー、分解せん断応力の3つの要素に基づいて理論モデリングが可能であると考えられている。これらの要素の個別検討は近年実現されてきたが、これらを統合して一体的に扱うモデリングは実現されていない。本研究では、弾性論に基づいて転位の挙動を予測する従来の転位動力学シミュレーション技術を基盤に、順方向劣化現象特有の電気・温度に依存するモデリングを導入することにより、電気・熱・応力の影響を一体的に取り扱う事のできる解析手法の提案を目指している。 2020年度は,研究計画の第一段階としていた順方向劣化現象へ応力が与える影響に関する実験,デバイスシミュレーション,有限要素法を活用したモデリングの結果についてまとめ,学術誌にて公表した。この研究では,部分転位にかかる分解せん断応力が20 MPa程度であれば,順方向劣化現象の閾値となる少数キャリア密度への影響は10 %程度に収まる事が示された。一方で,実験によって得られた結果はばらつきが大きく,拡大起点で転位にかかっている応力等をより詳細に検討する必要があることがわかった。また,本年度下半期は計算機環境を整備し,主に研究の基盤となるSiC原子間ポテンシャルの改善に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,第一段階としていた順方向劣化現象へ応力が与える影響に関するモデリングをまとめた後に,転位動力学シミュレーションをSiCに適用する手法の検討に着手する予定であった。第一段階は達成されたが,研究の過程で使用を検討していたSiC原子間ポテンシャルに課題が見つかり,課題を克服した原子間ポテンシャルの作成が必要となった。そのため,当初20年度内に着手を予定していた転位動力学シミュレーションについては手法の調査、検討に留まっている。
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今後の研究の推進方策 |
研究過程で見つかった課題であるSiC向け原子間ポテンシャルの改善を進め,本研究課題で得られた成果の一つとしての公表を目指している。また,本年度は転位動力学シミュレーションの開発に取り組み,SiCの部分転位に適用可能なシミュレーション手法の提案を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時の想定以上にコロナ禍の影響が続き、全ての学会がリモート開催となったため旅費で計上していた金額が未使用となった。次年度の学会開催についても不透明な部分が多いが,次年度の申請内容通り、研究に必要な物品の調達、成果発表、論文投稿等の資金として充当したいと考えている。
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