研究課題/領域番号 |
20K22387
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮廻 裕樹 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 助教 (40881206)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞集団 / 位相欠陥 / 関数論 / 逆問題 / ソフトマター |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,紡錘形状を持つ細胞の配向構造を再現性良く実現するための細胞パターン形状の設計手法を構築し,組織の均質性が数理的・物理的に保証された生体組織の設計理論を確立することである.具体的には,位相欠陥(配向角度が定義できない特異点)を陽に考慮した細胞集団の配向構造を求める計算法(順問題解法)を複素関数論により構築し,順問題解法をもとに細胞パターンの形状設計法(逆問題解法)の構築を行う. この目的の達成のため,本年度は単連結な2次元閉領域内にパターニングされた細胞の配向構造を求める順問題解法の構築に主に取り組んだ.紡錘形状を持つ細胞を液晶分子として物理モデル化し,正則関数を用いて細胞の配向角度を表現するアプローチを検討した.そして等角写像論などを援用することにより,位相欠陥の位置を陽に考慮した細胞配向の計算方法を導出することができた.導出された計算方法は,パターン形状やパターン領域内の位相欠陥の数に制約がないという点において優れている. さらに複素積分に関する公式を用いることで,細胞集団が持つ弾性エネルギーを効率的に計算する方法を検討した.その結果,弾性エネルギーを位相欠陥の位置に関して極小化する反復アルゴリズムを導出し,パターン形状が与えられたときの位相欠陥の生成位置を予測する方法を確立した. 導出された計算方法の妥当性は数値計算により検証された.特に,パターン形状の非対称性と弾性エネルギーが極小となる位相欠陥の配置パターンとの関係を定量的に評価することができた.今後,数値計算による計算結果と実際の細胞培養実験による実験結果との整合性を検証していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画の通り,本年度の目標であった細胞配向構造の順問題解法についての計算法の確立と数値計算による検証が完了したため.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,本年度に確立した細胞配向の順問題解法をもとに,所望の位相欠陥の配置パターンを実現するための細胞パターン形状の設計理論(逆問題解法)を確立することを目指す.また,実際にマウス筋芽細胞(C2C12)を培養基板表面上でパターニング・培養したときの細胞配向を計測する.得られた実験データと順問題・逆問題解法で予測された配向構造との整合性を評価し,それぞれの解法の有効性を実験的に実証することを目標とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果発表の計画を変更し,本年度の研究成果に関する学会発表および論文投稿を次年度の前期に変更したため.学会発表および英文校正・論文投稿費用に使用する計画である.
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