研究課題/領域番号 |
20K22390
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
佐藤 大輔 長岡技術科学大学, 技術経営研究科, 助教 (30883897)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 火炎輻射 / スペクトル / 水素 / メタン / マグネシウム / 熱電変換 / 光電変換 |
研究実績の概要 |
今年度は火炎輻射スペクトルの解析と基礎発電特性の評価を行った. まずは,重要な再生可能エネルギーかつ入手性に優れる水素とメタン(バイオガスの構成要素)を対象に,火炎輻射量に占める太陽波長成分と赤外(熱輻射)波長成分の割合を,当量比(燃料と酸化剤の比率)を変えながら調査した.結果として,当量比によらず太陽波長成分の輻射量は赤外波長成分のそれに比べて極めて小さいことがわかった.この事から水素/メタンについては,火炎輻射を全て熱電変換素子に吸収させ高温熱源として活用するのが妥当と判断した.次に,メタン-二酸化炭素-酸素対向流拡散マイクロフレーム(火炎サイズが1mm程度の微小火炎)の周囲を熱電変換素子で被覆した構成について発電性能を測定し,燃焼発熱-電力変換効率0.88%が得られた.これにより得られる電力エネルギー密度は,リチウムイオン電池,リチウムポリマー電池と同程度と試算された.今年度は,限られたシステム構成と燃焼条件での評価に留まったが,それらを最適化(2021年度実施予定)することでさらなる性能向上が期待できる. また,マグネシウムの燃焼輻射についても検討した.燃焼輻射スペクトルを測定し,最も普及している結晶シリコン太陽電池の発電感度スペクトルと傾向が概ね一致していることが明らかになった.太陽輻射よりもシリコン太陽電池の発電感度スペクトルとの合致度が高く,光電変換による高効率な輻射直接発電が期待できる. 以上,今年度検討した範囲においては,火炎輻射の太陽波長成分と赤外(熱輻射)波長成分を分離してそれぞれ光電変換と熱電変換を行うのではなく,燃料ごとに適した発電方法を用いるのが良いとの結論に至った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水素,メタン,マグネシウムの燃焼による火炎輻射スペクトルの解析について,詳細な検討の余地は残されているものの,各燃料に適した発電方法を見極める段階まで進めることができた.メタン燃焼については,2021年度に実施予定だった発電性能の評価についても一部着手できた.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,より詳細に火炎輻射スペクトルを解析するとともに,火炎輻射直接発電システムの設計と性能実証試験を行う.メタン/水素に対しては熱電変換,マグネシウムに対しては光電変換を用いたシステムを検討予定である.火炎の輻射量/輻射スペクトル,発電素子温度などの関係を整理し,燃焼エネルギーが輻射として伝播し電力に変換されるまでのエネルギー変換のメカニズムを明らかにする.また,得られた成果をまとめ,学会発表や雑誌論文として学術公表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は以下のとおりである.①当初,波長選択構造による太陽/赤外波長スプリッティングを検討予定だったが,今年度の成果から実施しない方針となり,それに係る費用が発生しなくなったため.②火炎輻射スペクトル解析システムの仕様を決定するための予備試験に時間を要し,今年度購入予定だった測定機器類を2021年度に購入することとしたため.①により生じた未使用分については使途を変更し,火炎輻射をより詳細に解析するためのセンサー,光学フィルタ等の購入に充てる.
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