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2020 年度 実施状況報告書

材料組織制御のためのデータ同化援用マルチスケール加工熱処理モデルの開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K22393
研究機関東京農工大学

研究代表者

三好 英輔  東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70880962)

研究期間 (年度) 2020-09-11 – 2022-03-31
キーワード材料微視組織 / 再結晶 / 粒成長 / 粒界 / フェーズフィールド法 / 分子動力学 / データ同化
研究実績の概要

構造材料の高性能化においては,材料熱処理時の再結晶・粒成長現象の高精度予測と制御が鍵となる.このためには数値計算の活用が不可欠であるが,従来の数値手法には「物性値」「再結晶核生成」「計算規模」の不備不足が課題として残り,実組織予測への適用にあたり大きな障害となっている.本研究は,フェーズフィールド(PF)法に基づく再結晶モデルと,分子動力学(MD)による原子計算とをデータ科学により融合し,両手法の長所を相補活用した新しい物理冶金学モデルを開発するとともに,高性能計算や変形解析を援用することで,上記課題を解消し材料開発の加速を目指すものである.本年度は,PF-MDデータ同化による物性取得法の開発,および大規模PF計算を通じた再結晶核生成の基礎的メカニズムの解明を行った.
材料物性取得の研究では,PFとMDによる粒成長計算を直接比較し,アンサンブルカルマンフィルタを用いたデータ同化を行うことで,両計算結果がよく一致するようPFモデルに含まれる未知パラメータ(粒界エネルギー・易動度)を最適化する手法を開発した.これにより,実験や原子計算では評価が困難な粒界物性値の逆問題的推定を可能とし,物性情報不足の解決に向けて有力な指針を示した.
大規模PF計算の研究では,これまでに構築したPF法の並列GPU計算コードを異常粒成長問題に拡張し,任意個数の結晶粒による異常粒成長計算を実現した.さらに,同コードを用い,集合組織強度や粒界エネルギー,易動度を変化させた種々の仮想集合組織を対象として,十万以上の亜結晶粒を導入した大規模計算を実施した.その結果,亜結晶粒の異常成長による再結晶核生成では,粒界易動度の異方性(不均一性)が支配因子となることを明らかとした.今後,上述の粒界物性取得法により,特に粒界易動度の詳細なデータセットを構築しPF計算に導入することで,再結晶予測の大幅な高精度化が期待できる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

PF-MDデータ同化に立脚した粒界物性値の取得法は,おおむね当初の予定どおり開発を進めることができた.また,双子実験と呼ばれる数値テストや,実際のMD計算結果への適用により,同手法の妥当性も詳細に示した.これらのうち,双子実験に関する成果は既に論文にまとめており,現在,共著者との最終議論を行い国際誌に投稿準備中である.未解決課題として,粒界物性の面方位依存性を強く呈する一部の種類の粒界ではデータ同化による物性推定結果の収束性が悪く,有意な推定値を得るに至っていない.今後,面方位依存性を考慮してPFモデルの改良を行うなどの対策を取り,任意の粒界への物性取得を早急に可能とする.異常粒成長ならびに再結晶核生成の並列GPU大規模PF計算コード開発については,予定を上回るペースで作成が完了し,良好な並列性能を実現できた.さらに,世界最大規模の粒成長計算を通じて異常亜結晶粒成長の支配因子を初めて明確に特定するなど,現象の解明に資する有意義な知見を多く得た.以上の各研究に関連して,既発表の成果が国際会議2件,国際誌論文1編と複数あり,積極的・継続的な対外発信につながっている.これらの点から,研究の総合的な進展状況はおおむね順調であると判断した.

今後の研究の推進方策

本年度のMD-PFデータ同化における未解決課題(粒界面方位依存性)に対し,PFモデルに面法依存性を導入する改良により速やかな解決を図る.次いで,スパコンTSUBAME3.0上で系統的なデータ同化を実施し,粒界物性値の詳細なデータセットを作成したのち,それを並列GPU大規模PF計算コードに導入する.その後,系統的PF計算を通じた再結晶核生成条件の定量化,PF計算と変形解析法(結晶塑性高速フーリエ変換法など)との連成を順次行う.これにより,加工熱処理における再結晶・粒成長の一貫的高精度予測を可能とし,加工条件・熱処理条件と材料組織との相関性の解明につなげる.最後に,構築してきた再結晶・粒成長予測法の有用性と以降の展望を検討し,数編の学術論文において本研究を総括する.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Large-scale phase-field study of anisotropic grain growth: Effects of misorientation-dependent grain boundary energy and mobility2021

    • 著者名/発表者名
      Miyoshi Eisuke、Takaki Tomohiro、Sakane Shinji、Ohno Munekazu、Shibuta Yasushi、Aoki Takayuki
    • 雑誌名

      Computational Materials Science

      巻: 186 ページ: 109992~109992

    • DOI

      10.1016/j.commatsci.2020.109992

    • 査読あり
  • [学会発表] Data assimilation-based approach to estimate grain boundary properties using phase-field grain growth simulations2021

    • 著者名/発表者名
      Miyoshi Eisuke、Takaki Tomohiro、Shibuta Yasushi、Ohno Munekazu
    • 学会等名
      TMS 2021 150th Annual Meeting & Exhibition (TMS2021)
    • 国際学会
  • [学会発表] Validation of a novel measurement method for anisotropic grain boundary properties based on data assimilation and multi-phase-field simulation2020

    • 著者名/発表者名
      Miyoshi Eisuke、Takaki Tomohiro、Shibuta Yasushi、Ohno Munekazu
    • 学会等名
      The 3rd International Conference on Computational Engineering and Science for Safety and Environmental Problems (COMPSAFE 2020)
    • 国際学会

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公開日: 2021-12-27  

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