本研究においてターゲットとしていたのは,エタノール射出型ジェットピーニングの表面処理に伴う接着接合強度改善を狙っていたが,そもそも接着接合継手の耐久性強度や破壊メカニズムに関して不明な点が多く,本課題に関連して接着接合継手の破壊機構に関して検討を行った. また,評価対象としては自動車用鋼板SPCCとステンレス鋼板SUS材を使用した.なお,水影響を検討するため,60℃の水に1~5週間浸漬させた接着接合継手を作製し,未浸漬のものと比較検討を行った.これに加えて,疲労き裂進展速度も比較することで学術的な知見拡充を目指した. 結果として,SPCC材を母材とする接着接合継手は水浸漬を施すことで,大幅に疲労強度が低下することがわかった.一方で,SUS材を母材とする接着接合継手は水浸漬によって大きく疲労強度は低下する傾向は見られなかった.また,SPCC接着接合継手を水浸漬すると界面破壊が支配的となるが,SUS接着接合継手を水浸漬すると凝集破壊が支配的となる.そのため,SPCC接着接合継手においては水浸漬に伴う界面強度の低下を起因として,疲労強度が低下したことが明らかとなった. また,接着接合体の接着内部の疲労き裂進展速度を算出するため,DCB試験法を用いて,SUS材を母材とした接着接合体の接着内部の疲労き裂進展速度を実験的に求めた.その結果,水浸漬を施すことでき裂進展速度が大きく低下することが明らかとなった.
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