研究課題/領域番号 |
20K22396
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
金平 大河 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (50880019)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 粒子法 / SPH法 / 海洋エネルギー / 数値シミュレーション / FSI / 多分割式造波水槽 |
研究実績の概要 |
近年,国内外問わず,実海域に海洋エネルギー発電装置を設置するプロジェクトが活発化しているが,海洋エネルギー発電技術は多くが研究開発に留まっており,実用化には多くの課題が残されている.特に,近年は発電量増大を目的として,海洋エネルギー発電装置の設置海域が,沿岸からエネルギー賦存量の多い沖合に変化してきている.沿岸に入射してくる波は波峰が揃い,沿海から海岸へ伝播する一方向規則波浪場となることが多いが,沖合の波は波峰が揃わず,多方向不規則波浪場となることが多い.しかしながら,海洋エネルギー分野における既往の数値水槽は,(i)一方向波浪場の再現を目的としたものが多く,実海域で現れる多方向波浪場や2波群が交差する2方向波浪場の再現には適用が困難である.また,(ii)海洋波と海洋構造物の相互作用計算や,砕波を伴う強非線形な現象の取り扱いも困難であった. そこで,本研究では上記の問題を解決すべく粒子法を用いた数値水槽モデルの改良に取り組んだ.今年度は,円形型水槽において規則波浪場を再現する造波モデルの開発を行い,任意規則波浪の再現とその精度検証を行った.また,規則波浪中に設置された浮体の6自由度運動成分の取得を行った.規則波浪場及び流体・構造物相互作用の再現性について,数値流体力学的観点から本モデルの妥当性について検証した.そして,結果を取りまとめ,関連学会(海洋開発)の国際会議で発表した.また,再現性・実用問題への適用可能性についてさらなる検証と考察を加えた成果を国際SCI論文に投稿予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発した円形型水数値槽に用いられている多分割式造波機に対して,任意規則波浪場を再現するための境界条件(造波機の回転角時系列)を作成し,その再現性について検証した.また,数値計算結果の比較対象となる実験も行い,規則波浪中に設置された円筒型浮体の6自由度運動データも取得済みである.以上のことから,おおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
実験・数値シミュレーションの比較検証:昨年度実施した実験(規則波浪中に設置された円筒浮体の運動試験)を対象とし,同様の数値シミュレーションを行う予定である.本年度作成した境界条件を適用して規則波浪と円筒浮体の相互作用計算を実施する.波浪場の再現性の確認の後,円筒浮体の6自由度運動データを取得し,実験データと比較する.適宜パラメータ調整を行い数値計算精度の向上を図る予定である. 反射波吸収条件のコーディング:任意波浪場において模型実験を行う場合,所望した波浪条件の再現性はもちろん,構造物からの反射波や,入射波の吸収条件も必要となる.実際の水槽(FloWave)では,波が造波機に与えるトルクを検知し,それを打ち消すようにアクティブ制御が行われている.数値水槽モデルにおいても境界条件に同様の制御方式を取り入れなければ,多重反射系によって波浪場が乱されるため,長時間の数値実験が困難となる.この反射波の問題が数値実験に影響を与える場合は,反射波吸収条件のコーディングに取り組む予定である.
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