研究課題/領域番号 |
20K22401
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
寺原 拓哉 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (10875305)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | ST-SI-TC-IGA / Isogeometric Analysis / T-spline |
研究実績の概要 |
本研究は物体同士の接触を伴う流体現象の解明に向け、高次の基底関数を用いた境界適合格子を用いた流体解析手法を信頼性、効率性、安定性の全てにおいて向上することを目的としている。本年度は高次の基底関数の1つとしてNURBSを用いた境界適合格子を局所的に細分化するため、T-splineを導入した。NURBSは面要素や体積要素を表現する際に、構造的な格子点配置を取ることから、一部を細分化するために解析領域全体の細分化が必要となる。一方でT-splineはNURBSを拡張し、異なる基底関数を列ごとに用いることで局所的な細分化を可能としている。NURBSおよび、T-splineによる細分化は、その形状や空間における物理量を変更せずに実行可能である。T-splineを接触を伴う流体現象の解析に適用するにあたって、テスト解析を行った。解析に使用する例として、2次元の解析領域内を2つの厚みを持たない1次元の物体が接触、乖離を繰り返す例を用いた。本解析例では境界層部分をT-splineによって細分化した。解析結果から、局所細分化が改めて接触を伴う流体現象の解析手法の精度向上に有効であることを確認すると共に、現状の解析手法の改良が必要な場合があることを確認した。接触を伴う流体解析手法は、時空間の同時離散化を応用し、格子点同士が重なり、空間の要素体積が0になる瞬間の体積変化を捉える方法である。このとき、リメッシュすることを回避するため、重なった格子点同士の未知数を同一とみなしている。しかし、T-splineで表現された格子は非構造的な格子点配置となる場合があるため、必ずしも未知数を同一とみなすことができない。これに対し、T-splineにおける細分化は細分化前の格子点の未知数の線形和で表すことができることを利用し、押しつぶされた要素における未知数をそれ以外の未知数の線形和で表現することで解決する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに物体同士の接触を伴う流体現象の解明に向け、高次の基底関数を用いた流体解析手法に対してT-splineを適用した解析を行った。T-splineを用いた境界適合格子による解析や接触を伴う流体現象の解析はこれまでにないため、2次元のテスト解析から始めた。解析に使用する例として、2次元の解析領域内を2つの厚みを持たない1次元の物体が接触、乖離を繰り返す例を用い、境界層部分をT-splineによって細分化した。解析結果からはT-splineによる局所細分化が接触を伴う流体現象の解析手法の精度向上に有効であることが示された。これと同時に細分化の箇所によっては現状の解析手法の改良が必要であることを、確認することができた。接触を伴う流体解析手法は、時空間の同時離散化を応用し、格子点同士が重なり、空間の要素体積が0になる瞬間の体積変化を捉える方法である。このとき、リメッシュすることを回避するため、重なった格子点同士の未知数を同一とみなしている。しかし、T-splineで表現された格子は非構造的な格子点配置となる場合があるため、必ずしも未知数を同一とみなすことができない。これに対し、T-splineにおける細分化は細分化前の格子点の未知数の線形和で表すことができることを利用する。押しつぶされた要素における未知数をそれ以外の未知数の線形和で表現することを考案した。以上の研究成果は国内の学会にて発表済みである。 このように、解析手法の精度向上のためT-splineを適用した接触を伴う流体現象の解析を実現したことに加え、そのとき生じた問題への解決策を考案したことから、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画通りに研究を進めつつ、考案したT-splineで表現した境界適合格子による接触を伴う流体現象の解析のために必要な手法を適用した解析を行う。その後、T-splineを用いて3次元の心臓弁を行う。この際、境界層部分の解像度に着目する。解析結果から得られる壁面せん断応力を基に解析格子の弁尖表面からの第一層高さを無次元化した値であるy+を指標としてどれだけ細分化するかを決める。はじめは解析全体を通して静的な局所細分化をしたものから行い、最終的に動的な局所細分化による解析を目指す。本解析を用いて、解析の効率化についても検討する。本解析はスーパーコンピュータを必要とする大規模解析になるため、並列化の際にCPUごとに担当する格子点や要素をどう割り振るべきかを検討する。解析結果からは速度勾配テンソルの第2不変量および弁尖表面の壁面せん断応力を得ることで解析における精度の検証を行う。さらに、解析を行うにあたって新たな課題が出ればそれにも取り組む予定である。
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