研究課題/領域番号 |
20K22411
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
奥谷 智裕 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (60876449)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 伸縮性導体 / 修復ポリマー / 印刷 / 転写 |
研究実績の概要 |
耐久性の高い伸縮電子デバイスは、ウェアラブルデバイスやソフトロボティクス応用に重要である。耐久性を高めるアプローチの1つとして、壊れても修復できるという、修復機能をデバイスに付与することがあげられる。そこで本研究では、破損を修復できる配線・センサを、ゴムやテキスタイルなどの様々な伸縮する素材上に開発することを研究目的とした。 様々な伸縮する素材上に開発する手法として、印刷法によりデバイス作製を行うことにした。まず本年度では修復性をもつポリマー、導電材料、有機溶剤を混ぜ合わせた伸縮性導電インクの開発を主に行った。修復性をもつポリマーを溶液重合で作製し、その際の有機溶剤の選定を行った。導電材料としては、グラファイトやカーボンブラック、銀フレークを使用した。ポリマーに親和性の高く、かつ印刷によるパターニングが可能となる揮発性をもつ有機溶剤の選定を行った。印刷でポリウレタンやシリコーンゴムといった伸縮性基材に配線を形成した。それぞれの基材への印刷での配線形成には成功した。しかし、ポリウレタン基材では、銀フレークを用いた場合に、配線の導電率を向上させるための焼成プロセスのアニール温度(150℃)に耐えられなかった。シリコーン基材へ印刷を行った場合、印刷配線と基材の密着性が弱く、剥がれてしまう問題が生じた。そこで逆に、この密着性の弱さを利用した。具体的には、自己修復ポリマーのポリマー同士の高い接着性を用いて、修復ポリマー基板に導電配線の転写を行った。これにより、配線単体では120%以下の伸長率しかなかった伸縮性導体は、修復基板に転写することで、>1000 S/cmかつ300%の伸長率を有する伸縮性導体へと改善された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
伸縮性基材の選定には苦闘したものの、肝となる伸縮性導体インクの開発と印刷手法の確立は行えた。さらに転写法を組み合わせることでの、特性向上を実現できた。伸縮性導体の特性としては、>1000 S/cmかつ300%の伸長率を有しており、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年度で作製した導電インクを用いて、それぞれの基材に印刷・転写した際の伸縮特性への影響を調べる。テキスタイル基材やメッシュ基板などの穴の開いた基材上での特性も調べる。伸縮特性への影響を調べたのち、この伸縮性導体の修復性を評価する。具体的には、100%の繰り返し伸縮1000回を行った配線が、24時間後に初期抵抗にどこまで近づいた(修復した)か、評価する予定である。これにより、研究課題の核心をなす学術的な問いである、「ゴムやテキスタイルなどの伸縮する素材に、修復機能をもつ自由形の配線・センサパターンを実装し、繰り返し伸縮による破損を修復できるか」に回答する。最後に、印刷による配線パターニングを応用し、電極や歪みセンサを実装し、心電や筋電、体の伸縮を測定し、動くヒトの生体情報のモニタリングを目指し、長期使用実現性を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
導電材料などの材料費や消耗品などが他の研究費で支払われたため、次年度使用額が生じた。
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