研究課題/領域番号 |
20K22415
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
曲 勇作 島根大学, 学術研究院理工学系, 助教 (20874887)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 酸化物半導体 / 低温固相結晶 / 高移動度 / 水素 / フレキシブルデバイス |
研究実績の概要 |
非晶質酸化物半導体を用いたフレキシブル基板上での高性能デバイス実装に向けた研究が世界中で盛んに行われている。本研究では、さらなるデバイス性能向上を目的に、結晶性材料を用いたフレキシブル結晶性酸化物半導体という新たな分野を開拓する。具体的には、スパッタ成膜時に水素添加した酸化インジウムの低温固相成長メカニズムおよび、キャリア生成機構を明らかにし、それらの制御技術を確立することで、100 cm2V-1s-1を超える電界効果移動度を有する薄膜トランジスタをプラスチック基板上で実証することを目的とした。 本研究の主たる成果は、1)酸化インジウムスパッタ成膜時の水素・酸素添加量を変化させることで、成膜初期の結晶性を制御し、低温固相成長によりHall移動度104 cm2V-1s-1を達成した、2)スパッタ成膜後のアニール雰囲気を変化させることで、ギャップ内欠陥密度を低減し、キャリア濃度を1018 cm-3以下まで制御した、点にある。 本手法により、100 cm2V-1s-1を超える電界効果移動度を有する薄膜トランジスタを作製温度300℃で実証し、今後のフレキシブルデバイス応用に向けた基盤技術を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な条件で成膜した酸化インジウム薄膜の電気・光学・構造特性を評価しており、固相成長メカニズムおよび、キャリア生成機構解明に向けたデータ収集ができている。さらに、フレキシブルデバイス応用に向けた研究でも、世界トップレベルの酸化物半導体薄膜トランジスタ特性を実現しており、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた、酸化インジウム薄膜の電気・光学・構造特性データを詳細に解析すると同時に、固相結晶膜の化学結合状態を硬X線光電子分光法、結晶粒内および結晶粒界がキャリア輸送特性に与える影響を透過型電子顕微鏡により評価し、状態密度や欠陥準位と局所構造の相関関係を明らかにする。さらに、固相結晶化温度の低温化に向け、触媒の導入や熱以外のエネルギー供給を試み、プラスチック基板上での高性能デバイスを実証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
薄膜分析を外注する予定だったが、延期したため。また、コロナウイルス感染症拡大により、国内会議2件、国際会議2件が現地開催からオンライン開催に変更になり、出張旅費がかからなかったため。
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