本年度は,まず,空間クロスモジュレーション(SCM)による基本モードから高次モードへの変換について,計算過程への遺伝的アルゴリズム導入による高性能化に取り組んだ.10モードファイバ中のLP21を変換目標とし,挿入損失とクロストークを組み合わせて評価関数として世代交代の際に与える分散や世代数などのパラメータに対する変換性能を評価した.解析の結果,従来の反復計算による最適化ではクロストークの低減と損失の増大がトレードオフとなっていたが,遺伝的アルゴリズムの導入によりクロストークと損失の両方を低減する方向への最適化が確認された.しかし,損失については0.1 dB程度と微小な改善に留まっているため,パラメータのさらなる調整が課題となる. 次に,実験によってSCMによる高次空間モードの変換を実証した.実験では,1550 nm帯用のシングルモードファイバに対して波長532 nmの光源を用いることで数モードファイバの代用とし,ファイバへの入射条件を調整することでLP11ライクな光波を生成して変換の入力光とした.この光波をSCMで10モードファイバ中の各導波モードに変換し,変換後の光波の複素振幅分布をディジタルホログラフィにより取得した.得られた分布から,変換によって強度と位相の両方にLPモードの特徴が明確に現れていることを確認した. 研究期間全体を通して,SCMを用いた高次モードの変換について,解析と実験の双方から検討した.基本モードを入力とした変換と比較して挿入損失とクロストークの両方について性能が低下したが,計算過程に与えるパラメータの調整が不十分であることから,今後も検討を進めることで改善が見込まれる.数値解析によって得られた成果については,2021年度電子情報通信学会ソサイエティ大会および第69回応用物理学会春季学術講演会で発表した.
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