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2020 年度 実施状況報告書

ダイヤモンドNV中心を利用した精密電流センシングデバイスの研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K22423
研究機関国立研究開発法人産業技術総合研究所

研究代表者

村松 秀和  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (40889028)

研究期間 (年度) 2020-09-11 – 2022-03-31
キーワードダイヤモンド窒素-空孔中心 / 共焦点顕微鏡 / 電流比較器
研究実績の概要

分散型電源の出力は直流から高調波まで様々な周波数の電力を含んでいるため、電力評価を行う上で欠かせない電流計測も広帯域に行われる必要がある。しかし、精密電流計測機器である電流比較器は、構成要素の一つである磁場センサが単一で広帯域な測定が行えないため、分散型電源の出力のような広帯域な電力評価を行う場合には周波数帯域ごとに異なる磁場センサで検出する必要がある。したがって、各計測ポイントに複数のセンサを設置しなければならず、高コストで複雑なシステムとなってしまうため、単一のセンサで広帯域計測を行えるような技術が求められている。ダイヤモンド窒素-空孔中心(NV中心)は高感度磁場センサとして研究が進められており、広帯域な計測も可能なことから、本研究では、NV中心を磁場検出センサ素子として利用した電流比較器を作製し、精密電流計測の広帯域化を目指す。
電流比較器は、高透磁率コアに基準となる電流源と測定対象である電流源の電流が生成する磁束が打ち消し合うように巻かれた一次巻線と二次巻線、及びそれらの磁束が打ち消し合ってなおコア中に残っている磁束を検出する磁場検出機構、コア中の磁束が零となるよう調整する補償機構から成る精密電流計測機器である。したがって、電流比較器の性能は磁場センサの感度や周波数帯域に大きく依存している。この磁場センサとしてNV中心を利用するため、当該年度はNV中心による磁場検出を行うための共焦点顕微鏡を作製した。NV中心による磁場検出には、緑色光とマイクロ波を照射し、赤色の蛍光を観測する光検出磁気共鳴法(ODMR)が利用される。ODMRを実施する方法の一つが共焦点顕微鏡である。作製した共焦点顕微鏡は、NV中心の代わりに蛍光を発する試料を観測することで、NV中心のODMRが可能であることを確認した。また、次年度に開発予定の電流比較器に用いる高透磁率コアの設計、試作を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度は、NV中心による磁場検出を行うODMRを実施するための共焦点顕微鏡を作製し、NV中心に代替可能な材料を利用した試料の観測を行っており、次年度に開発予定の電流比較器に用いる高透磁率コアの設計、試作を完了した。また、研究代表者の所属する産業技術総合研究所においてNV中心の研究を行うグループから高品質なNV中心素子の提供が確約されているため、ODMRによるNV中心の蛍光スペクトルの観測を実施する目処が立った。したがって、当該年度の目標はおおむね達成された。
また、研究代表者が所属する研究グループは精密電気計測に関する研究に従事している。このため、高性能な電流比較器の作製技術や評価技術についての知見を有しており、精密電気計測に必要な測定評価の基準となる標準器や測定器、計測環境を整備している。したがって、ODMRによるNV中心の蛍光スペクトルが得られれば、電流比較器の試作や評価がスムーズに行える環境となっており、次年度の研究実施計画において遅滞のない遂行が可能である。

今後の研究の推進方策

まずは、当該年度に作製した共焦点顕微鏡によりODMRを行い、NV中心の蛍光スペクトルを観測する。現在、NV中心素子の入手の目処が立っており、入手次第測定を行える状況である。蛍光スペクトルが観測出来たら、当該年度に設計、試作した高透磁率コアを用いてNV中心を磁場センサとして利用した電流比較器を作製し、磁場検出を行う。このとき作製する電流比較器は、高精度に電流値を調整可能な基準電流源二台を用いる。磁束を打ち消し合うように巻かれた一次巻線と二次巻線のみのシンプルな構造の比較器を製作し、各々の巻線に基準電流源から電流供給する機構とする。予備実験として、基準電流源の出力を変化させながらこれらが生成する磁場をNV中心素子が検出できていることを確認する。また、電流の周波数依存性の評価も行う。
続いて、NV中心は磁場以外にも温度などほかの物理量についても感度を有しているため、磁場以外の物理量が磁場検出に与える影響を評価する。具体的には、他の物理量の変化を計量する機構を付加し、その物理量の精密計測を行う。例えば、試作した電流比較器に小型白金抵抗のような温度センサを搭載し、温度による磁場検出への影響を評価する。そして、他の物理量が磁場検出に影響を与える場合は、磁場のみを分離検出する手法を確立する。
以上が達成できたら、電流比較器に補償機構を加える。補償機構は、コア中の磁束が零となるように微小電流により磁束を注入する巻線とフィードバック回路からなる機構である。こうして作製された電流比較器を各周波数帯域で既存の精密電流計測技術と比較して、その性能を評価する。また、パルスODMRなどにより磁場検出の高感度化を行う。

次年度使用額が生じた理由

当該年度において、微小な未使用額が生じたため。
これらの未使用額は、次年度の消耗品費として充てる。

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公開日: 2021-12-27  

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